誰でも一度は大なり小なりの立ちくらみや、めまいの経験はあることと思います。一概にめまいといっても、大変な脳の病気の前兆であったり、三半規管の問題であったり、血圧の関係であったり、心因性のものであったり、いろいろあります。でも、なかなか診断が難しく、患者さんが来院されるころは、症状が落ち着いて、はっきりした所見が認められない場合が多いです。まずは、CTやMRIをとって、脳神経学的に異常がなければ、耳鼻科で三半規管を見てもらうようにといわれてやってくる方がほとんどです。
人間は眼、耳(迷路)、皮膚や足などの知覚からおくられてくる情報を脳が処理して、体のバランスを保っています。めまいは、このシステムのどっかに、異常が起き、まるで、自分が、動いているように感じてしまうことです。
めまいの症状としては、一番多いのが、ぐるぐる回る回転感、ふわふわした浮動感、足元がふらつ不安定な感じ、眼の前が暗くなる立ちくらみなど。
一番怖いのは、脳に関わる病気によって引き起こされるめまいです。小脳や脳幹の梗塞や出血。高齢の方では気をつけなければなりません。
そのほかのめまいでは、頭を一番楽な位置にもっていき、衣類をゆるめて横になってください。静かな部屋で、眼を閉じて安静にする。そして、焦らずに大きな波が去るのを待ってから、医療機関を受診してください。
ここで、めまいについての分類を述べてみます。ちょっと難しいところもあるかもしれませんが、こんな風に分類されていると思ってください。
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【めまいをきたす疾患】 |
■末梢性めまい |
1.メニエール病 |
末梢性めまいでは、比較的多く、内耳病態として、内リンパ水腫の存在がある。症状としては、自発性のめまい発作、耳鳴、難聴を反復するもので、
1)回転性めまい発作を反復する。
2)耳鳴、難聴が反復、消長する。
3)他のめまい、難聴をきたす疾患を除外する。 |
2.良性発作性頭位性めまい benign paroxysmal positional vertigo ( B P P V ) |
発作機序として、耳石剥離が知られている。内耳の平衡班、特に、卵形嚢班に何らかの原因で、脆弱性が生じ、耳石が耳石膜から、脱落して、内リンパ腔に浮遊した状態になる。この状態で、臥位患測下頭位をとると、後半規管のクプラに耳石が付着し、感覚毛を刺激した結果めまいをおこす。高齢者、中耳炎手術後、頭部外傷後などの、患者に多いことから、耳石が耳石膜からはがれるという推論が妥当性をもつ。 |
3.前庭神経炎 |
突然に一側の末梢前庭系が高度に傷害された場合で、強いめまい、平衡障害、嘔吐がおこる。必ずしも、神経の炎症とはかぎらない。自発性の強いめまいがあり、嘔吐をともなうが、聴力は正常で、耳鳴りもない。フレンツェル眼鏡下で、健側向きの水平廻旋混合性眼振がみられ、体平衡検査では、患測への転倒、あるいは偏奇現象がみられる。 |
4.突発性難聴
5.内耳炎
6.外傷 ( 内耳しんとう、側頭骨骨折 )
7.ハント症候群 |
4〜6はいずれも、めまい以外に難聴、耳鳴りを伴う。
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■中枢性めまい |
1.椎骨脳底動脈循環不全症 vertebro-basilar insufficiency VBI |
めまいは、血流不全を背景にしておこるので、一過性で数分以内の短時間のめまいが頻発する。また、眼前暗黒感、下肢の脱力発作、平衡障害、といった、訴えを示すことがあるが、本症に特有の所見はない。高齢者で、動脈硬化、高血圧、糖尿病などを、合併しそのような症状を一過性に示すときは、VBIと診断できる。 |
2.小脳出血 |
回転性めまい、強い嘔吐、頭痛の三徴候が主たるもの。 |
3.小脳梗塞 |
小脳出血と類似しているが、重篤さが少ないのが特徴であり、末梢性めまいとして、治療されていることもある。
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■心因性めまい |
心因性のめまいとは、心理的葛藤が根底にあって生じるめまい感です。成人、小児を問わず、対人関係(例えば学校、会社の対人関係)が原因となることが多く、睡眠不足や過労も引き金になりやすいです。パニック障害や過換気症候群である場合もあります。
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■当院における めまい の検査指針は、次のようになっています。 |
1、問診、視診
2、聴力精密検査
3、耳鳴検査(耳鳴りを伴う場合)
4、耳のレントゲン撮影
5、フレンツェル眼鏡による頭位眼振検査
6、体平衡機能検査
・重心動揺検査 |
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身体の直立時の動揺を記録し、定量的に評価するもので、重心の位置の圧センサーにより、垂直加圧の変化をとらえる。動揺型は、求心型、前後型、左右型、びまん型、多中心型等に分類される。正常者では、求心型、びまん型が多く、一側前庭障害では、左右型、両側前庭障害では、前後型が特徴とされる。 |
・足踏み検査 stepping test |
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遮眼(閉眼)にて両上肢を前方に伸ばし、太腿を水平に上げるようにして、50歩または100歩足踏みを行う。体の回転角、最終地点までの移動距離、移行角を計算する。また、足踏み中の軌跡も記入し参考とする。50歩の足踏みでは、45度以上の回転角を異常とする。100歩の足踏みでは90度以上の回転角を異常とする。45〜90度疑いとする。足踏み中の過度の動揺、失調性歩行、転倒等は異常と判断する。 |
・歩行検査 gait test |
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遮眼(閉眼)にて6mの直線上を前向き、または後ろ向きに歩行させる。前進にて1m、後進にて1.4m以上の偏奇を異常とする。前庭系、小脳の一即性障害で陽性となることが多い。また、小脳障害では失調性歩行を示す。 |
7、VOG(Video Oculograph)ビデオ式眼振計(※現在は都合により中止しております。)
・視運動眼振検査 |
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線の動きをスクリーンに投影して視性に起こる眼振を検査する。視運動眼振の異常は中枢病変による。 |
・視標追跡検査 eye tracking test |
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眼前の視標画が左右に正弦運動するのを、注視追跡させて、その際の眼球運動を記録する。正常者では、運動はスムースで、中枢障害者では階段状になる。 |
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当院では、めまいや平衡障害の診断に、メディテスター(ビデオ式眼球運動検査装置)を使用しています。
メディテスターは、電極式検査のように外部映像刺激装置を準備したり、患者さんの顔面に電極を張り付ける必要もなく、自由度のある眼振検査を行うことができる高度な診断機器です。 |
8、自律神経機能検査
・起立試験(schellong test) |
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安静仰臥、急速立位、立位5分後における血圧、脈拍の測定を行い、収縮期血圧21mmHg以上の低下、脈拍16mmHg以上の狭小化、または、脈拍の21以上の増加をみたときに陽性とする。 |
このようなステップを踏んで、めまいの診断を行いますが、やはり、診断には限界があります。
検査には、時間がかかりますので、予約となります。 |