本年6月で開院33年目を迎えます。
令和の年号にもやっと慣れ、すらすらと令和何年と書けるようになりました。
ところで、私の標榜する耳鼻咽喉科は内科・外科系の範疇で分けますと立派な外科系の科目です。私が群馬大学の耳鼻咽喉科教室に入局したころ、耳鼻科は耳・鼻・咽喉頭・頭頚部(甲状腺も含めて)に関る外科的なことはすべてやっていました。今では独立した科目として成り立つ形成外科や頭頚部外科も含まれていました。小さな子供の口唇・顎裂の手術、小耳症の形成手術、甲状腺腫瘍の摘出、はたまた喉頭がんや下咽頭がん、舌癌などの全摘手術、その後の再建術、副鼻腔の悪性腫瘍のため上顎全摘出に加え眼球も摘出するという、一般の人には想像を絶するような手術を行っていました。私が群馬大学で机を置いていただいた部屋はつんとしたホルマリンの匂いがする雑然とした部屋でした。その中のガラスビンの中には上顎と眼球の全摘出の標本がありました。
現在、市井で耳鼻科を生業とする者として一番強く感じるのはもちろん悪性腫瘍を見逃さないということが肝心ですが、ちょっとした患者さんの疑問や不安を取り除いてやるということだと思います。専門医からみれば何のことはないようなことを心配して来院される方は意外と多いです。そこをわかりやすく説明し、少し経過をみればよいことなどお話ししています。外科医とはかけ離れた医師としての生活をしています。今はnet社会で一般の患者さんがいろいろな情報に振り回され余計な心配をしているように思います。
最近は私自身が老人の仲間に入り、高齢の方にも「そうなんだから」とか「そうだよね〜」とか、ため口でもヒンシュクを買わないような年齢と風格を伴ってきました。これは喜ばしいことか悲しむべきか、判断に迷うところです。
今年一年、信頼するスタッフたちとつつがなく診療が行え、患者さんからのうれしい一言「その言葉で安心しました。」と言われるようにがんばりたいと思います。
今年もよろしくお願いします。
院長 塚原 圭子