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2013
鼻の中にも石ができるのです!!

2月の中旬の暇な午前中に、2週間前から耳が聞えづらく、詰まった感じがするとの訴えで、男性がお見えになりました。耳は局所的にも問題なく、聴力検査、チンパノグラムも異常なし。そこで私が、鼻が詰まったりすると、耳もおかしくなるからといって、一応、鼻やのども見せてもらうことにしました。

患者さんは以前から鼻は慢性的な鼻炎があり、鼻をかむことも多いとおっしゃっていました。でも、生まれてこの方、記憶のある限りでは耳鼻科にかかるのは初めてのこと。

鼻の中をのぞくと、「う〜む、これは何だ?」、総鼻道をほぼ占めるほどのはなくそのかたまりがあります。本人も右の鼻は、ただれがいつもあってがびがびしているといっていましたので、何の気なしに、きれいにしましょうといって、鉗子でひっぱると鼻中隔粘膜に癒着していて、出血してきました。状況が分からないので、無理はやめることにしました。前から見て約1.5cmぐらいの塊をつついてみると石のように固まっていいました。まさに石です。

人間の体にはいたるところ石といわれるものができます。代表的なのは痛みの強い尿管結石や胆石、痛風結石、あと耳鼻科領域で言えば、唾液腺にできる唾石。扁桃腺の中にも扁桃腺石ができます。鼻腔内にも鼻石がまれにできます。

耳鼻科のバイブルからの鼻石(rhinolith)の説明は下のようになっています。

「鼻内に止まった異物の周囲に鼻分泌物中の炭酸カルシウム、リン酸石灰またはマグネシウムが沈着したものである。成人に見られ、大きさは種々であるが、報告例は50〜80gのものが多い。大きくなって周囲の骨壁を破壊することもある。

診断としては慢性副鼻腔炎、悪性腫瘍と鑑別が必要であるが、硬い褐色桑実状のものがみられれば診断は確実である。」

確かにこの患者さんは硬い褐色桑実状で、鼻の写真を撮ると下の写真【図(1)】のようにレントゲンで白い塊が観察できます。副鼻腔にはほとんど問題はありませんでした。


図(1)



図(2) 【図(1)の拡大で白枠の部分が石の陰影と思われるところ】



患者さんはずいぶん前に鼻を打ったことがあると言っていましたが、それが影響したのかわかりません。またなぜこのように、ある程度の大きさの石まで形成したのか不明です。

次の写真は実際の鼻の中の写真です。両側の鼻腔を示しています。またCTによる精査もしていただきましたので、その一部を供覧します。


図(3) 【両側の鼻腔の別々の内視鏡所見を鼻中隔で合成】



図(4) 【水平断CT所見】



図(5) 【前額断CT所見】



図(6) 【図(4)の一部拡大】          図(7) 【図(5)の一部拡大】



その後、この患者さんには手術的治療を勧めて、某病院をご紹介しました。手術予定とのお返事をいただきました。