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●耳鼻咽喉の季節の話題


冬2005〜2006
【インフルエンザにかかったかなと思ったら、すぐに医療機関に受診しましょう。】
早めの診断、早めの治療。


・・・かぜについて・・・
 よく、患者さんで、熱が出ていないから風邪じゃないと思うんですけど、のどが痛いんですとか、鼻が出るんですけどという、訴えを聞くことがあります。
ここで、カゼについて勉強したいと思います。
かぜは感冒または風邪症候群と呼ばれており、多種類の原因によって生じる主として急性上気道炎をいいますが、急性の鼻炎、咽頭炎、喉頭炎などがそれぞれ単独に起こることがあったり、また複合して症状を現すことがあります。これに発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛、悪心、嘔吐、下痢などの全身症状が加わります。原因としては、感染性のものがほとんどであり、ウイルス、リケッチア、スピロヘータ、マイコプラズマ、細菌、真菌、寄生虫などがありますが、80〜90%はウイルスに起因するものです。
風邪の感染経路は飛まつ感染を中心とする経気道感染ですが、一部のウイルスは手指に付着した鼻汁より他人の手指、さらに気道へ感染することが知られています。風邪症候群は1つの病変が1種類のウイルスによりおこるものではなく、多くのウイルスによってもひきおこされます。ただしウイルスの種類によっては、罹患(りかん)部位、症状に特徴を示すものもあります。
ちょっと難しいですが、病態の説明をします。教科書からの引用ですが、何となくそういうものかと思っていただければ結構です。上気道の粘膜は寒冷にさらされたり、乾燥にさらされたりすると抵抗が減弱します。すなわち粘膜下の血管が収縮して貧血状態になり、また粘膜が乾燥すると繊毛運動は緩慢になります。粘膜で産生される分泌型IgAは減少し、同時に免疫担当白血球の動員能が低下して、粘膜の感染防御機能が低下してきます。このような状態の粘膜にウイルスが飛まつ感染すると、ウイルスはまず粘膜表面をおおう粘液層に入りますが、粘液内のリゾチームが減少していたり、繊毛運動も不良であるため、ウイルスは粘膜層に浸入します。粘膜の繊毛円柱上皮は変性を起こし、粘膜下層に充血、浮腫、ムチンの産生過剰、白血球の増多などをおこします。分泌物のpHはアルカリ性となり、細菌は増殖し、ウイルス感染に続いて細菌の2次感染がおこってきます。細菌感染がすすむと粘膜は破壊され浸出液が表面に現れ、そのなかに白血球、脱落した上皮細胞、フィブリンなどがみられます。しかし、炎症がおさまり回復にむかうと、粘膜の繊毛運動は数時間〜数日にして出現してきます。ウイルス感染後は局所抗体あるいは血中抗体などの産生が見られるようになります。
冬の寒冷と乾燥にはご注意を!
最後に、インフルエンザは急激に高熱をもって発病し、頭痛、腰痛などの全身症状が強く、それに、鼻汁過多、咽頭痛、咳などの呼吸器症状を伴い、およそ1週間の経過で治癒します。インフルエンザも風邪症候群のなかの1つです。以前は臨床的に診断したインフルエンザとインフルエンザ感染症は正確には同一ではなかったですが、ここ最近で迅速診断キットが発売され、疑わしい方は15〜20分で診断できるようになりました。
【冬きたりなば、春遠からじ、花粉症!】
予防薬の早期内服で症状を軽くしましょう。


・・・花粉症はアレルギー性鼻炎の1つです・・・
アレルギー性鼻炎は、難しく言うと、『鼻粘膜のT型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、水溶性鼻漏、鼻閉を三主徴とする疾患』と定義されています。アレルギー性鼻炎は、好発時期から、通年性と季節性に大別され、花粉症は季節性のものです。発症には、遺伝因子と環境因子が関与し、特に遺伝因子の関与は大きいです。最近の疫学調査ではアレルギー性鼻炎は20%を超える高い有症率が示されています。だんだんと増加傾向にあります。日本におけるアレルギー性鼻炎の特徴は杉花粉症の占める割合が高いことです。
先に述べたように診断のポイントとしては@発作性のくしゃみ、水溶性鼻漏、鼻閉がみられる。A一般にかぜ症候群のような咽頭通、発熱はみられない。B花粉症では目の症状(目のかゆみ、充血)がほとんどにみられる。C家族歴からアトピー素因の存在が疑われる。
とはいっても、大量の花粉に暴露されると、口腔症状や咽頭症状(のどがひりひりしたり、いがいがしたり)、皮膚症状(顔面の皮膚がかさかさしたり、目の周りがかゆくなったり)、発熱、頭痛、頭がおもかったり、喉頭症状(のどの異物感や、せき)もでたり、全身症状などの出現もあります。
当院での検査は、血清特異的IgE抗体の定量を勧めています。少し検査料は高くなりますが、敏感で確実です。現在13種類まで保険内で検査できます。アレルギー性鼻炎に関した検査項目としては、次のようなものがあります。参考にしてください。
【イネ科花粉】
  ハルガヤ、ギョウギシバ、カモガヤ、ヒロハウシノケグサ、ホソ麦、オオアワガエリ、アシ、ナガハグサ、コヌカグサ、セイバンモロコシ、小麦、オオスズメノテッポウ、スズメノヒエ
【雑草花粉】
  ブタクサ、ブタクサモドキ、オオブタクサ、ニガヨモギ、ヨモギ、フランスギク、タンポポ、ヘラオオバコ、シロザ、アキノキリンソウ、ヒメスイバ、イラクサ、カナムグラ
【樹木花粉】
  カエデ、ハンノキ、シラカンバ、ブナ、ビャクシン、コナラ、ニレ、オリーブ、クルミ、ヤナギ、マツ、スギ、アカシア、ヒノキ、クワ
【動物】
  ネコ、イヌ、馬、牛、モルモット、ハト、ガチョウ、セキセイインコ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、豚、ハムスター、ニワトリ、アヒル、ラット、マウス
【ダニ】
  ヤケヒョウダニ、コナヒョウダニ、アシブトコナダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ
その他、昆虫、室内塵、真菌、細菌、寄生虫、職業性の薬品、食物類なども調べることができます。
上にあげたもので、私も見たことの無いものもありますが、それらに長年にわたって、あるいは大量に暴露されると、感作されてくるのでしょう。
では、次に治療に関してですが、いうまでもなく、治療の第1は、抗原からの回避です。花粉情報の活用、マスクや眼鏡による花粉抗原との遮断です。特異抗原による減感作療法というものがありますが、効果の出現が期待される維持量まで3〜4か月必要なこと、アナフィラキシーなど重篤な副作用の出現の可能性があることなど問題点があり、一般の診療所では、やっているところは少ないと思います。当院でも、手間やコストのことを考えると施行できない状態です。申し訳ございません。最も広く普及してるのが、薬物療法です。これはアレルギー反応で生じるヒスタミンをはじめとした化学伝達物質をブロックしていきます。今は、従来のヒスタミン受容体拮抗薬のような、作用時間が短かかったりしないで、鎮静作用や抗コリン作用といった副作用も軽減された新しい世代の抗ヒスタミン薬や、いろいろな化学伝達物質を阻害する治療薬も登場しています。また、局所薬や、漢方薬もあります。
薬物療法はあくまでも重症を中等症に、中等症を軽症にもっていくもので、アレルギー性鼻炎の治癒を目的としたものではありません。
さて、スギ花粉症では、副作用の少ない薬剤を飛散予定日の2週間ぐらい前から内服する、初期療法が、飛散開始時にすでに薬効を十分に高めておけます。
ということで、早めの耳鼻科医でのご相談をお勧めします。
あと、患者さんの中には、1回の注射で反応を抑える注射を希望される方がいますが、耳鼻咽喉科学会では薦めておりません。長期に作用するステロイドを注射するのです。手技は別に難しいものではありませんが、副作用の点で、副腎機能に障害をおこしたり、局注部位の組織の萎縮をおこしたりするようです。副作用の発現の割合は高いものではないと思いますが、内服と違い1回注射してしまえばその作用をとめることはできませんから、やはり危険だと思います。
治療の主流は薬物内服療法です。
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