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2015
〜男の方はのどがおかしいと思った時は耳鼻科への受診を!〜

今年、上半期の芸能界の話題の一つに歌手の○○さんが喉頭がんの告知をして、私たちの前に喉頭摘出後の姿を果敢にも見せてくれました。喉頭を摘出するという事は、音楽プロデュサー兼有名音楽グループのソロボーカリストでもある○○さんにとっては断腸の思いだったと考えます。

悪性腫瘍でいろいろな部位を摘出する場合があります。耳鼻科の領域でいえば、喉頭腫瘍はトップですが、上顎洞や舌、鼻腔など、摘出後は他人からみても形態的な変化がわかるものがあります。初期のものでは部分切除や、放射線治療、抗がん剤治療などで治癒するものもありますが、ステージが進むとそういうわけにはいきません。

○○さんの場合では声を失うという事は、喉頭全体を摘出し、永久気管孔を前頸部につくり、スカーフやガーゼの前垂れで覆い埃や異物が入らないようにします。気管粘膜が直接外界に接しているということは粘膜も乾燥して気管粘膜の線毛運動に影響をきたします。そして、自分の声は永遠にでません。食道発声といって食道に空気をためてゲップのように空気を胃から出すときに咽頭・鼻腔に共鳴させて発声するやりかたを、今後○○さんは努力されるのだとおもいます。哀愁を帯びた声をだすことは無理です。また、この発声法はなかなか難しく、早くに習得されることを、心よりお祈り申し上げます。 そんなことで、○○さんの発表後にのどの不調を訴え来院される男の方がちょっとふえました。その中でことしほぼ上半期で喉頭の腫瘍の方が3名いらっしゃり、やっぱ男は特に中年以降はのどの不調を感じたら、耳鼻科を受診されるように勧める話題になりました。



症例1
この方の場合は去年のどの異物感を感じて一度受診され内視鏡を施行。その前の内科での胃カメラの検査で胃のポリープ指摘されていました。当院の内視鏡の検査では著変なく消化器系が調子悪くてものどの異物感を感じることがあるからとお話しし、様子をみるようにお話ししました。その時の内視鏡写真を正常の喉頭所見の方と比較して提示いたします。頸部にも異状はありませんでした。 
正常の人 この患者さんで所見がないときの状態
色調は条件により違いますが構造的には左の正常の方ととくに差異はありません。
その10カ月後です。頸部のぐりぐりとのどの異物感を訴えてお見えになりました。
明らかに頸部リンパ節の腫脹です。さっそく内視鏡をしました。喉頭の腫瘍です。
なんでもっとリンパ節が小さいときにお見えにならなかったのかと、患者さんに申し上げましたが、後の祭りです。その時の内視鏡写真を供覧しますが、やっぱり、人間半年もたてばからだの状況も変わるから、半年前に異常なくとも半年後に異常がないことはないのだということです。
半年前(右上の写真と同一) 半年後

症例2
2〜3日前より鼻づまりと声枯れがあるとの訴えで来院されました。
風邪気味の症状はあるのですが、声枯れが気になります。間接喉頭鏡では声帯が見えませんでした。急性の喉頭炎では次回来院時にはかなり良くなるので、先ずかぜの薬をのんでいただきます。次回も声の症状が変わらなければ内視鏡をするという事でお話しいたしました。
内服終了後に来院され、少し楽になったとおっしゃいましたが、やはり声が気になります。
やはり喉頭に腫瘍性病変あります。白っぽくごつごつした感じの 変化がみられます。
喫煙歴がかなりありました。喉頭腔も狭くなっていて、深く挿入することは危険でした。

症例3
1か月前から喉が痛く、声がすれも徐々に感じるようになったとの訴えでした。
この方の写真はあまりよくわからないとおもいます。内視鏡も斜めに入っています。右の仮声帯の腫脹と動きがなく、また左の声帯も腫脹していました。喉頭腔も狭くなっているので、内視鏡を深く挿入するのは危険なので、やや遠目で観察しました。やはり喫煙歴が長いです。
1月から6月の間に3人の喉頭腫瘍の男の方がお見えになり、やはり女性より男性の方が圧倒的に多いとの感想を改めて思いました。
次に喉頭の腫瘍に関しての総論的なことを、耳鼻科のバイブルより引用させていただきます。
ここでは喉頭の悪性腫瘍に関して述べたいとおもいます。
喉頭の悪性腫瘍には喉頭癌と喉頭肉腫がありますが、圧倒的に前者が多いです。高齢者の増加とともに声帯癌が増加する傾向にあります。性差はおよそ10:1で男性が多いです。喫煙、飲酒、声の酷使、口腔内の不衛生などが発生原因に関係するとも言われています。
病理組織学的には扁平上皮癌が大部分を占め、発生部位としては声門部に多いです。
症状としては発生部位によって主に出る症状に多少の違いがあります。
  1. 声門癌
    初期には嗄声です。急性の炎症の場合と違い改善傾向がみられないこと。頑固に続く嗄声に関してはきっちり診断しなくてはいけません。ひどくなると喘鳴や呼吸困難の症状もでてきます。
  2. 声門上癌
    喉頭蓋上面などにできたもので、初期には咽喉頭部の異常感、嚥下痛があり、嗄声はまだ生じません。腫瘍が大きくなり声帯の動きに影響がでてくると嗄声が生じてきます。
  3. 声門下癌
    初期には無症状で、咳や痰などが生じることがあります。
鑑別疾患には声帯ポリープ、ポリープ様声帯、良性腫瘍(乳頭腫など)、喉頭結核などがあります。

・・・おまけ・・・
9月の中旬に来院された患者さんです。
顔面に蚊らしきものが飛んできてそれを払いのけたら左の耳に入ったらしい。でも今は痛みもないが、何やら違和感があるので、念のため診察してもらいたいとのこと。
左耳に耳鏡を入れゆっくり見ていくとすぐには何もなく、少し奥を覗くと虫の足らしき黒いものがみえてきました。個人差はありますが外耳道壁が飛び出ていると鼓膜との境が窪みになっている方がいます。そこにいました!その窪みに羽が引っ付いたようになったヒトスジシマカ(ヤブカ)が足をばたつかせていました。
水責めをして、吸引で除去しました。
患者さんにはご協力いただき耳の中でうごめく蚊をビデオに撮らせていただきました。
ウワッーです。

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