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2013~14
〜ときどきみられるひどい扁桃腺の炎症、扁桃周囲炎および扁桃周囲膿瘍について〜

扁桃腺が腫れてのどが痛くなったとおっしゃる患者さんは外来でよくいらっしゃいますが、その程度がひどくなった状態と考えてください。
聞きなれないと思いますが、扁桃腺の周辺の粘膜が膨隆して、張り出したように見えます。 だいたいが急性口蓋扁桃炎に続発するものです。起炎菌としては急性口蓋扁桃炎と同じと考えられます。
症状としては、通常一側性ですが、もちろん反対側も扁桃炎の症状を起こしています。
先ず自覚的には嚥下痛が強くあり、耳も痛いような放散痛があります。そして口が十分に開かなく、痛みのため、物が食べられなくなり、口臭がでたり、舌苔が真っ白になったりします。中にはもっとひどく、炎症が下咽頭にまで波及したり、喉頭蓋も腫れたりするかたもいます。
ではここで扁桃腺のおさらいをしましょう。下記の図はいわゆるのどのリンパ組織の図です。

ワルダイエルの咽頭輪といってのどに入ってきた細菌やウィルスは最初ここである程度キャッチされます。
いまここで問題になるのは、口蓋扁桃の周辺が腫れる状態です。模型図のように口蓋扁桃の実質の奥のほうには粘液線がいくつかあって、そこにまで細菌が感染すると、そこに膿がたまって膿瘍を形成するようになります。
ではどういうふうにたまるかというと、下記の図のようになります。向かって左の図は実際のはれかたのシェーマで、左の扁桃周囲炎を示しています。右側は扁桃腺実質が膿瘍により圧迫され前のほうに飛び出していることがわかります。

次に、当院にお見えになった患者さんで上記のような症状をていした患者さんの写真を供覧します。向かって左側の写真は左の扁桃腺が突出しているのがわかります。向かって右側は治った時の内視鏡写真です。治った時の写真は両側の扁桃腺がすっきりしています。

同じ方の写真ですが、下の写真は向かって左は下咽頭から喉頭にかけての写真です。粘液の貯留が多く粘膜も浮腫状態です。咽頭全体に炎症があり、左下咽頭壁が突出しているのがわかります。右は治癒後の写真です。

もう一人扁桃周囲炎の患者さんを供覧します。

同じく左の扁桃周囲炎ですが、咽頭部の写真は右の扁桃腺も炎症のため突出しています。
左は前口蓋弓が全面にでていて扁桃腺実質は腫れていないようにみえますが、実はひどいほうは周囲炎を起こしている左のほうなのです。また、鼻腔内から咽頭・喉頭にかけて内視鏡でみると、右の扁桃腺が腫れているのがわかりますが、左のほうは側壁が上のほうから下まで腫れているのがわかります。
治療としては、膿瘍が形成されている場合は、局部の切開を行い、排膿します。 また、膿瘍形成に至ってはいない周囲炎に対しては、抗生剤や腫脹寛解のためにステロイドも加え、点滴をします。もちろん切開排膿した患者さんにも同様の点滴をします。