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2013
〜喉頭の病気なのに喉頭の病気ではない?って?〜
・・・反回神経麻痺について・・・

1週間前より声が出し辛くなっているとの訴えで、お見えになりました。私が聞く限りでは、声の質はそれほど悪くありませんでした。間接喉頭鏡検査では喉頭の披裂部粘膜の発赤がみとめられましたが、あいにく声帯自体やその動きを確認できなかったので、一時的な喉頭炎でしょうとお話ししました。患者さんには声帯の確認はできていないこと、もしその症状が続けば、喉頭の内視鏡をする旨をお話ししておきました。

後日やはり声が出し辛いとの訴えが同様にあるため、内視鏡を施行しました。

よーく見るとどうも右の声帯の動きが悪い為、その症状が起こったようです。

次の写真は患者さんの安静呼吸時と発声時の喉頭の内視鏡写真です。シェーマもしめしていますのでお分かりできると思います。

向かって左側が右側の声帯で発声時に内転してないのがわかります。


安静呼吸時


発声時

次の写真は右の声帯麻痺が治った時の内視鏡の写真です。発声時に両側声帯は正中に内転しており麻痺が治った状態になっています。また本人の自覚症状も消失しています。


安静呼吸時


発声時



さて、表題にかかげた、喉頭の病気であって喉頭の病気ではない、あるいは耳鼻科の病気であって耳鼻科の病気ではないという表現にかえれば、これは声帯の炎症や腫瘍によるものではなくこの声帯の動きを支配する神経に問題あって動きが障害されているわけです。 すなわち、喉頭筋の動きを支配するのは脳神経の一つである迷走神経の枝である反回神経という運動神経に問題があるからです。

延髄から出た迷走神経は、頚静脈孔を舌咽神経、副神経とともに通って頭蓋の外に出ます。頭蓋からでた、迷走神経は内頚静脈に接して頚部を下方に向かって走ります。次に右では鎖骨下動脈、左では大動脈弓の高さで反回神経を分枝し、反回神経はこれらの動脈を迂回して、気管と食道に近接して上に向かって走り、喉頭に達します。このように反回神経は長い経路をとり、種々の器官に接しているため、何らかの障害を受けやすいのです。特に左側のほうが経路が長いので、障害を受けるのは左側が多いのですが、今回の症例は右側でした。

原因としてはその走行にそって考えられるわけです。

(1)大脳皮質や延髄路
(2)延髄
これらは中枢性麻痺といって、他の脳神経障害も伴いますから、単純な声帯の動きがないというだけではすみません。
耳鼻科で問題になるのは、末梢性の障害です。先ほど述べたように
(3)頚静脈孔付近
(4)頚部迷走神経
(5)胸部迷走神経
(6)頚部反回神経…この部分は甲状腺手術後におこるものが多いです。
(7)神経全体…気道感染に続発したウィルス性神経炎。
(8)原因不明のもの…この範疇に入るものが相当数をしめます。ただしこれは原因の探求を十分にしてからの話です。この場合は経過をみていると、自然に治っている場合があります。

今回の症例では、全身的な検査のできる病院をご紹介し、お返事として特に問題点はなかったとの回答を得ています。

結果として、この患者さんは1ヶ月ぐらいで普通に発声できるようになり、念のため、内視鏡での検査をさせていただきました。上の内視鏡写真をみてください。右の声帯の動きが正常にもどっているのを確認しました。

次に動画を示します。
麻痺時 正常時

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〜前回の鼻腔結石の続き〜
某病院へのご紹介後、手術を受けられました。
病院からのお返事では、鼻腔粘膜への癒着が強く、一塊ではとれなく、砕いた状態で分割して摘出したようです。下記の写真がその石です。全部あわせると結構大きかったのではおもいます。