トップページへ 院長の気ままな話題
 
2012
いろいろな耳・中耳炎を中心として20例

いろいろな中耳炎について皆さんに見ていただきます。どこの耳鼻咽喉科のお医者さんも診療しているポピュラーなものばかりです。

急性のものから慢性のもの、果ては慢性中耳炎のため手術的治療を受けて、耳の中の構造が少々普通と異なってしまっているかたと…。7月下旬から約1ヶ月の間に来院された方で、耳の中の写真を無理なく撮らせて頂けそうな患者さんを選ばせてもらいました。

こころよく内視鏡の検査にご協力いただき、ここにその写真を掲載させていただいた患者さんには感謝、感謝です。なお小さいお子さんではなかなかゆっくり耳を内視鏡で眺めるのは大変ですので、大体が成人のかたです。職員も患者さん自身も、患者さんの耳の中の状態がどうなっているか、診療している私しか理解してないという点では、今回ご協力いただいた患者さん、及び職員にも勉強になり喜んでいただきました。私も内視鏡により肉眼では十分に観察できなかったところが見えて参考になりました。

先ず最初に左右の正常の鼓膜の所見をお見せします。これは私の耳です。我ながら美しすぎる耳に驚嘆してしまいます。年はとっても鼓膜は20代の若さ(?)です。卵円状の透明感のある鼓膜とその中に光る光錐、鼓膜に付着する耳小骨のツチ骨柄がみえます。鼓膜は耳の中の真珠といわれるように輝いています。左耳は前の日にちょっと強く耳かきをしたためか何となく外耳道が充血しがちです。



以下画面にむかって左が右耳で、右が左耳の写真です。上の私の耳の写真と比較してください。


(1)この方は左耳の急性中耳炎で、鼓膜がもっこりと膨隆し、痛みを伴っていました。もちろんこれだけ腫れると鼓膜切開で排膿しました。 小さい白い粉は耳垢です。


(2)この方は老人性の滲出性中耳炎のかたで、両側です。鼓膜全体が黄色っぽく何か黄色の液がたまっているような感じです。鼓膜が内陥しています。鼓膜穿刺をして中耳腔の浸出液を排出しました。その後通気治療をおこなっています。


(3)この方は左急性中耳炎ですが、もともと両側鼓膜が内陥気味です。左耳はツチ骨柄に向かって赤い血管線条が認められます。


(4)この方は両側の慢性中耳炎の方で鼓膜に穿孔を伴っています。時々耳漏が出てそのつど治療を行っています。細菌の培養同定・薬剤の感受性を見て点耳薬や必要があれば内服薬を処方します。


(5)この方は右の慢性中耳炎で、写真を取らせていただいた当日は耳漏が出たためにおみえになりました。分泌物が鼓膜穿孔部よりでて、貯留しています。外耳道は全体に赤みがかっていて分泌物の付着も認められます。その下の写真は、外耳道に貯留した分泌物を清拭したあとです。

 

(6)この方は左の慢性中耳炎で定期的におみえになります。最近は耳漏もなく安定しています。鼓膜に穿孔があります。右の鼓膜も決して清明というわけでなくやや白濁し、内陥しています。


(7)この方も左の慢性中耳炎で鼓膜に穿孔があります。右の鼓膜もやや白濁し外耳道がかさかさしています。


(8)この方も左の慢性中耳炎のかたで、正常な右側から見ると左の鼓膜は白濁し耳小骨突起がめだち、鼓膜緊張部のびらんしたような感じと外耳道後壁の変形があります。患者さんにお聞きした限りでは耳の手術はうけていません。


(9)この方は左の慢性中耳炎の術後の状態です。正常な右耳とくらべると大きく違います。かなり前に手術を受けており、いわゆる中耳根治術と言われる形式です。乳突蜂巣が削られ中耳腔と一塊になっています。鼓膜はありません。数年に一度左耳に堆積した耳垢を取りにお見えになります。この写真は除去後の写真になります。内視鏡でみると取り残しも見えますが、肉眼ではこれよりずっと小さい視野でしかも耳鏡を使い、鉗子でつまんでとるのですから、これがせいぜいです。


(10)この方も耳の手術を大昔に受けた方で、もしかすると私がまだ生まれてなかった?かもしれないときです。今では貴重な症例でして、右耳の後ろの乳様突起の部分がぽっこりあいており、開放創のままになっています。外耳の写真も掲載します。耳介を引くと空洞があり、そこからときどき膿性の分泌物がでるため当院におみえになります。中耳炎の治療のためです。おそらく抗生剤も発達していなかった時代、中耳炎から乳様突起炎をおこし、こういった手術様式になったのかもしれません。その後耳介後部を縫合しなかった理由はわかりません。患者さんも高齢で当時のことははっきりと覚えていないようですので・・・。
この患者さんの上左2枚の写真は右耳の後ろにあいているところから内視鏡を入れてみました。入り口の付近とその奥にある大きな穿孔を伴った鼓膜があります。向かって右の写真は正常の左耳です。今ではこういった手術をすることはありません。現在はなるたけ耳の機能を温存する手術を耳鼻科医はこころがけています。


(11)このかたは左の慢性中耳炎で経過をみています。鼓膜の緊張部には穿孔はないのですが、鼓膜弛緩部に穿孔があり上鼓室の真珠腫が疑われます。長い間落ち着いた状態なので、何か急変あったら手術が必要になる旨をお話ししています。


(12)この方は右耳の慢性中耳炎で鼓膜に大きな穿孔があります。穿孔を通して中耳腔の構造も一部みえます。


(13)この方は両側の中耳炎ですが、左は鼓膜弛緩部に穿孔があり、右は緊張部に大きな穿孔があります。右が時々耳漏がでるため治療しています。


(14)この方は小学校の高学年のかたで唯一お子さんです。両側の急性中耳炎です。鼓膜は両側とも膨隆していましたが、お盆で古河に帰省されていて、たまたま当院を受診されました。協力していただきました。中耳炎の既往は過去にそれほどないようですので、とり合えず抗生剤を投与し地元に帰られて治療を受けるようにお話しました。


(15)この方は右耳の慢性中耳炎の手術を受けられた方で、耳垢がたまった頃当院にお見えになり、わたしがお掃除します。骨の削開部にたまった耳垢栓塞は患者さんにはとれません。


(16)この方は右耳の滲出性中耳炎でおみえになっています。右耳はなんとなくよどんだかんじで、鼓膜の中心近くに少し赤く丸いところがみえます。何回か鼓膜穿刺といって、中耳腔にたまった浸出液を抜いているためです。今回も耳閉感と聴力の低下を訴えて来院され実際にこの後穿刺しました。ただ気になるのは右の鼓膜弛緩部の陥凹です。広がっている感じがして上鼓室に何か変化があるのではと考えられます。


(17)この方は左耳の慢性中耳炎の根治術を受けられており、1〜2ヶ月に1回耳のお掃除におみえになります。左耳は内視鏡の視野に全体像がはいりきれないので、乳突部の削開部がいちぶきれています。手前にみえる白いもやもやは耳毛です。


(18)この方は左耳の慢性中耳炎で鼓膜の中心穿孔があります。耳漏のため来院されました。穿孔の下部には黄色い分泌物が認められます。


(19)この方は両側の滲出性中耳炎の方で浸出液がたまり聞こえが悪くなると来院されます。継続的な治療はなかなか難しい方です。写真は少しぼけてしまいました。写真をとらせていただいてから右耳の鼓膜穿刺を行いました。


(20)この方は見事な両側慢性中耳炎ですが真珠腫などは伴わない単純な中心穿孔型の中耳炎です。耳漏がでると時々お見えになります。


以上、耳鼻咽喉科の外来でよく見かけるいろいろな中耳炎でした。