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2011
耳鼻咽喉科における細菌培養検査について

細菌培養検査はどの科でも日常的に行う検査です。

耳鼻咽喉科は外来においては感染症を扱うことが多いので、耳漏や鼻漏、扁桃腺の病原菌などの検査を行うことがあります。特に中耳炎では検査の頻度が多くなります。子供の中耳炎で耳漏が多い場合や、一般的な抗生剤の内服でなかなか耳漏が消失しない慢性中耳炎の場合、あるいは急性中耳炎で炎症が強く鼓膜切開などをして、今後の治療のことも考えた場合など、細菌検査をします。鼻に関しては、副鼻腔炎の症状が強く、なかなか菌の消失が認められない場合は検査します。

下記の表は当院の4月1日から5月31日までの診療日で、細菌培養検査をした方の一覧表です。そんなに多くありませんが、一人で2種類とか3種類とかの菌が同定されるときもあります。今回の患者さんでは検出されていない菌もありますが、おそらく他の診療所でもこのような細菌の傾向はあると考えられます。

中耳炎では急性でも慢性でも圧倒的にブドウ球菌類が多く、次に多いのがインフルエンザ菌です。急性の中耳炎では鼻腔や咽頭の細菌が耳管を通って中耳内に感染することが多いので、鼻腔や咽頭の病原菌と同じになる場合がほとんどです。

また中には菌の検出がなく陰性という結果に終わっている場合もあります。分泌物の採集法に問題があるのか、あるいは単純な浸出液なのかはっきりしませんが、陰性の場合は経験上、いずれ分泌物は消失します。






次の表はそれぞれの細菌に対する薬の感受性試験の結果です。

S:感性  I:中間  R:耐性

Rは薬がぜんぜん効かない、Sは有効である、Iはそこそこで、ほかに利く薬がなければためすかな、ということです。薬剤感受性検査は細菌培養同定検査と抱き合わせでオーダーします。陰性の場合や真菌の場合はこれでおわりですが、細菌が同定された場合は病原菌と思われる菌に関して薬剤感受性を行います。これもご覧の通り、けっこうRが多くなっています。私どもの僅かな検体数であってもこのような傾向が見られるということは、全国的にも同様の傾向が見られるということだと思います。






表の上の方にあるABPC、AMPCは代表的なPC系の薬ですが、中耳炎でよく見られるブドウ球菌(sataphylococcus aureus)には効かない場合が多くなっています。また、慢性化した中耳炎や外耳炎などでときにみられる緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)ではRが目立つようになります。耳の病気で頻用する局所薬である点耳薬は種類が限られているので、その中にSに該当する点耳薬がないと悲劇です。

今、医療の現場では薬の効かない薬剤耐性菌の出現が問題となっています。日本人はちょっとした風邪でも抗生剤を希望する患者さんがいます。医者のほうにも患者さんに請われるとつい処方してしまうことがあります。反省すべき点があります。

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