
2011
ヘルペスって何?
よく耳にするヘルペスウイルスについてお話します。
ウイルスは核酸の種類(DNAかRNAか)、核酸の本数(1本か2本か)、カプシドの形、エンベロープの有無などでウイルスを分類します。この分類でいくとヘルペスウイルスの核酸はDNAで、核酸の数は2本鎖、カプシドの形は正20面体、エンベロープがあります。
ヘルペスウイルスの種類としては
・単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1) |
:HHV−1 |
・単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2) |
:HHV−2 |
・水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) |
:HHV−3 |
・Epstein-Barr(EB) |
:HHV−4 |
・サイトメガロウイルス(CMV) |
:HHV−5 |
・ヒトヘルペスウイルス6 |
:HHV−6 |
・ヒトヘルペスウイルス7 |
:HHV−7 |
・ヒトヘルペスウイルス8 |
:HHV−8 |
があります。臨床の場でお馴染みなのは上から5つまでです。
ヘルペスウイルスは感染した部位の知覚神経の末端に侵入し、神経軸索を伝わって神経節に潜伏します。体の調子が悪かったりすると、潜伏していたウイルスが活性化します。耳鼻咽喉科領域での感染は単純ヘルペスウイルス1型が問題になります。顔面や口唇、口腔、咽頭の三叉神経領域に口内炎を生じます。単純ヘルペスウイルス2型は性器に親和性がありSTDで問題になります。
今回は咽喉がひどくいたく、特に水を飲んだりするときに痛くてたまらないと訴えた患者さんです。当院におみえになる前に近くで風邪ということで投薬を受けていましたが、痛みがとれないとのことで、当院を受診しました。のどを一見すると、口蓋垂周辺に小さい口内炎のできはじめのような紅斑が3つありました。これだけではそれほどの痛みはないかと思いました。所見の取り難いのどのかたでしたので、下咽頭から喉頭のほうを見るのに、内視鏡を使って見せていただきました。痛そうでした。舌根部から下咽頭にたくさんの口内炎ができていました。喉頭面にもありました。黒い点がヘルペスによる口内炎です。
上の内視鏡の写真は上から口腔面、咽頭面の順になっています。喉頭粘膜が少し浮腫状になっていて、嚥下痛のためか食道入口部に粘液が貯留しています。
治療としては、抗ウイルスの投与と、痛み止めの投与、粘膜の腫れがひどければステロイドも少々加えます。嚥下痛のひどい方で飲食が困難な方には点滴もします。