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2010
のどに小骨が刺さったとき

皆さんも食事中に魚の骨が刺さったかなと思うような、ヒヤッとした経験はあると思います。耳鼻科医である私も、やっちゃったかな、と思ってセーフということがあります。自分が刺さったら、どうしようかと思います。近くの耳鼻科の先生や、内視鏡をやっている先生に診てもらうのもなんだし、かといって、先輩の先生のところを頼って行くのもなんだし、困ってしまうことになります。私自身は好物の魚を食べる時はなるべく気をつけるようにしています。

のどの異物としては最初にひっかかりやすいのは扁桃腺の部分です。ここを見てなければ次に、下咽頭と喉頭をチェックします。この時、耳鼻科医のテクがでます。間接喉頭鏡という器械を使って、額帯鏡といわれる光源を額につけて光をその鏡面にあて、のどの奥の所見をその鏡面に映しだし、異物を確認します。今は昔のような額帯鏡ではなくLED光源で光をあてます。

この時、咽頭の反射の強い人は本当に困ってしまいます。ゲロゲロするばかりか、のどに器械をいれたとたんに、オエッとされた時には、特に昼食の直後とかだと、中身が出てしまうのでは、びびってしまいます。また、小さい子では、「お口を開けてネ。」と言ってもなかなか素直に開けてくれない場合もあるし、ひどいと泣き叫ぶばかりで、手の施しようがないということもあります。

実際の異物除去の手順をお話しします。

先ず、咽頭反射の少ない方で、扁桃腺に刺さった異物に関しては、明視下にて、舌に舌圧子をあて、鉗子にて摘出します。

次に反射の強い人では、表面麻酔の薬である、キシロカインビスカスというのを口の中に含んでいただき、ある程度反射を抑えてから、摘出します。

扁桃腺より下の下咽頭、特に舌の付け根にある舌根扁桃や喉頭部分に刺さっている場合には、下の図のような先の曲がった異物鉗子を使ってとります。実際にある場所と鏡に映った像は反転していますから、ちょっと難しいです。これで手こずると、ましてや患者さんが後ろに詰まっていると、院長は焦ってしまい、なかなかとれずに苦労します。

上の写真は私どもの職員にデモってもらいました。間接喉頭鏡を使って、光をあて、私がのどの奥を観察しています。その際、患者さんには舌を引っ張り出してもらい、首をやや前傾にして頭だけもたげてもらい、亀のような態勢をとってもらいます。そして異物を確認したら、異物鉗子を効き手である右手に持って、喉頭鏡を左手に持ち替えて、異物に向かってGO!めでたくとれれば万々歳。

次に異物が分かりづらく反射が強い人では異物を内視鏡で確認してから異物摘出用の内視鏡に入れ替え摘出!これもなかなか大変です。


これは実際ついこの間、当院にお見えになった女性の患者さんで、主訴は、アジの骨が刺さったようだということでした。間接喉頭鏡でははっきりしなかったため内視鏡で確認して、上の写真のように舌の付け根の舌根扁桃に水平に刺入していました。摘出したのは2pほどの大きなものでした。使った内視鏡は下記のような異物や組織を摘出する鉗子が挿入できるものです。実はこれを購入したのは、咽頭反射が強かったり、のどの異物がきわめて取りづらい場所にある場合、それまで消化器の内視鏡をされている近くの先生に紹介して摘出してもらっていたからです。1年に1~2回といえ、耳鼻科医としてはおちこんでしまうので、器械代の代金なんてとうてい償却されるものではありませんが、購入してしまいました。それ以降は摘出できています。下の写真は左から内視鏡と異物鉗子。異物鉗子を側管に挿入した図。最後の写真は異物鉗子の先端を開いた様子です。この作業も看護師と協力してやります。

早い話が、魚を食べる時には注意して下さい。あと、異物が刺さったと訴えてお見えになった患者さんのおそらく半分ぐらいは傷による局所の痛みで異物がない場合があります。耳鼻科医がざっと見てない場合は2〜3日様子を見ていただくよう、指導しています。それでも訴えが強い場合は内視鏡で確認しています。


次の写真は実際の摘出の流れです。下咽頭の舌根部に刺さっています。やはり間接喉頭鏡では見えづらく、内視鏡下で摘出した様子です。

画面むかって左より中央、喉頭蓋舌根面に白い魚骨の頭が見えています。左上、円の縁から光る金属の鉗子の先端がのぞいています。 異物に鉗子先端が接近中。 異物鉗子が魚骨をキャッチ! 異物鉗子を閉じてそのまま内視鏡と同時に引き揚げます。
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