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●耳鼻咽喉の季節の話題


2008
〜嗅覚検査について〜

先ず鼻の機能について考えてみたいと思います。3つあります。
1)嗅覚
2)気道としての作用 (吸気への加湿および除塵)
3)共鳴作用

では、人間の五感ってなんでしょうか?

よーく考えてみてください。

視覚、聴覚、味覚、嗅覚、それと触覚。あと鋭い人だと第6感っていうのもあります。嗅覚は人間の基本的な感覚なわけです。この基本的な感覚が失われると、視覚や聴覚ほど生活には支障はありませんが、豊かな生活を送ることができませんし、腐ったものなどをたべないようにするための危険からの回避ができなくなったり、ガスの臭いがわからなくなったりと身の安全に関ることもあります。

次に鼻の構造について述べます。鼻は単純なトンネルではなく、複雑な構造をしています。真ん中に鼻中隔という軟骨があって左右の鼻腔を区切っています。これもまっすぐに垂直ではなくどちらかに湾曲しています。鼻毛も生えています。側壁からは上・中・下の甲介がありその間には一番大きい総鼻道があって、下・中甲介の間に中鼻道があります。上甲介と鼻中隔との間に上鼻道があります。鼻の穴の前の方を前鼻孔、後ろの方を後鼻孔といいます。


右の鼻の入り口
(下甲介と奥で凸になった鼻中隔見えます。)

左の鼻の入り口
(下甲介と中甲介の半分が見えます。)
右の鼻の奥のほう
(中甲介と鼻中隔の凸部が見えます)

左の鼻の奥のほう
(中甲介と中鼻道がはっきりみえます。)
これでなんとなく鼻のなかの状況がわかったと思います。

下の図は簡単な鼻の中からの側面の構造です。鼻中隔中部・後部の上方とこれに対応する上甲介内側の部分を嗅裂と言って、嗅上皮があります。吸気によって外部より運ばれた嗅素(嗅分子)は嗅腺から分泌される粘液を溶媒として嗅上皮に存在する嗅細胞を刺激します。その中枢側は嗅糸となり頭蓋骨の一部である篩板を貫いて嗅球におわります。嗅球ではシナプスを形成して中枢に伝達されます。

では、次に本題である嗅覚検査の実際についてのべます。当院ではこの2つの検査を行っています。

1、静脈性嗅覚検査法
アリナミン液2mlを20秒かけて肘正中静脈(肘の内側で1番採血される血管)に注入、アリナミン臭をはじめて感じ取るまでの時間を潜伏期(正常7~8秒)、臭いを感じてから消失するまでを持続時間(正常60〜80秒)とします。
2、基準嗅覚検査
基準臭として5種類用います。それぞれ8段階の10倍希釈よりなり、臭い試験紙を患者さんにかがせて判定します。何か臭いがした希釈倍数を検知閾値、さらに濃度をあげ、何の臭いか正答した希釈倍数を認知閾値とします。 5種類のにおいとしては
A、 バラの花のにおい、軽くて甘いにおい
B、 焦げたにおい、カラメルのにおい
C、 腐敗臭、古靴下のにおい、汗臭いにおい、納豆のにおい
D、 桃のカンヅメ、あまくて重いにおい
E、 糞臭、野菜くずのにおい、口臭、いやなにおい
となります。においの素は下図のようになっていて、本来なら、これを試験紙にひたして、鼻先に持っていき、においをあてていただきます。その値はOLFACTGRAMの表に書き込みます。

なお当院では、永島医科器械より発売されているスプレイー式の嗅覚検査をつかっています。においの素はもちろん同じですが、いちいち試験紙に浸さなくてよく、鼻先に1噴きします。そしてにおいの素のはいったカセットを噴霧器にセットして、濃度を変えていきます。

実際の検査の様子は上の写真のようにします。 ただ、検査室 (零細耳鼻科の当院では院長室を兼ねています) が臭くなります。加えて、アリナミンのにおいも結構強烈で、アリナミンの静脈性検査を受けた方は体からにおっています。もちろん検査を行う看護師も衣類や髪ににおいがしみこみくさくなります。 患者さんには、1日元気になるからとは言っておりますが‥。この検査を受けたあとは大事な人と会わないほうがよいとおもいます。
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