トップページへ 院長の気ままな話題
 
●耳鼻咽喉の季節の話題


2007〜2008
耳鼻咽喉科の検査について〜耳管機能検査〜

以前の季節の話題で取り上げた、「マリンスポーツと耳の病気」の中でも出てきた耳管機能検査についてここでは詳しく述べていきたいと思います。

「耳管(じかん)って何?」って思う方がほとんどだと思います。

いまツバをゴクンと飲んでみてください。なんかのどの奥のほうから側頭骨に響くような感じがあると思います。これ、耳管が開いたところです。

では、耳管の機能について説明します。

耳管とは咽頭と鼓室(中耳腔)を連絡する長さ3.5cmほどの管腔です。咽頭側の2/3軟骨部、鼓室よりの1/3は骨部です。耳管の機能は中耳の換気、排泄、防御です。耳管軟骨についている口蓋帆張筋の収縮によって咀嚼、嚥下のときに耳管は開き、空気は鼓室に出入し、鼓室と外耳道の気圧が平衡を保っています。耳管の開大は主として口蓋帆張筋の収縮によりますが、口蓋帆挙筋も関与しています。耳管粘膜は線毛円柱上皮でおおわれ、線毛の動きは咽頭にむかっていきます。これにより鼓室の貯留液は流失されます。粘膜下には耳管腺があり咽頭開口付近の粘膜下にはリンパ小節(耳管扁桃)があります。

では、ここで実際の耳管の写真を供覧します。妙齢の女性の耳管です。

上の方はまるっきり正常です。下の写真は耳管狭窄症状の強い方でアレルギー性鼻炎に伴って耳管周辺の鼻粘膜および耳管粘膜も腫脹している写真です。特に左側が強くあり、通気治療をしていてもなかなかすっきりしません。

ご覧の通り下の写真では耳管隆起の粘膜がプヨプヨした感じがわかると思います。耳管咽頭口のくぼみもはっきりしていません。

では次に本題である耳管機能検査について述べたいと思います。

鼻腔にスピーカから7kHz前後の雑音を加え、外耳道に挿入したマイクロホン(耳の穴に入れた耳栓)によりこの雑音の大きさを測定します。耳管が閉じている状態では、鼻腔に発生した雑音はかなり減衰して外耳道内に伝わりますが、耳管が開くと伝播しやすくなり、外耳道内で検知される雑音レベルが上昇します。この外耳道内の雑音の大きさを継続的にグラフ表示し、耳管の開閉状態を調べます。嚥下のさいに生じる咽頭雑音も外耳道に挿入したマイクロホンで合わせて測定しグラフ表示します。咽頭雑音を検知することによって 嚥下がちゃんとおこなわれているかみます。咽頭雑音の後に耳管が開くことによって生じる雑音が生じているか見るのがこの検査のポイントになりますが、その雑音の波形により、正常、耳管狭窄症、浸出性中耳炎、耳管開放症の診断をおこないます。



では実際の様子を見てみましょう。下の写真はその様子です。



グラフのほうは私の耳管機能検査のデータです。下の波形はつばをゴクンと飲んでいるときの咽頭雑音で、その上の波形が耳管が開放して雑音が大きく聴取されているところです。いたって正常です。わたくしの場合は自分のつばを飲みながら検査できますが、つばの出の悪い方ではコップのなかの水を飲みながら行います。

この検査で診断できる疾患としては耳管狭窄症、耳管開放症、浸出性中耳炎、スキューバをするにあたっての耳管の状態の確認になります。

【院長の気ままな話題バックナンバーページへ】
トップページ 医院案内 耳鼻咽喉の病気 Q&A診察室 院長の気ままな話題