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●耳鼻咽喉の季節の話題


2006
マリンスポーツ、特にスキューバダイビングと耳との関係について。


青い海の中をのぞき、陸上の風景と違った非日常的な景色がみられるなんて、なんて素敵なことでしょう!
泳ぎがあまり好きでない人も、1度は海の世界に興味を持ったことがあると思います。
特にスキューバダイビングはあこがれのマリーンスポーツだと思います。夏の季節の話題としては、耳との関係でお話ししていきたいと思います。
だれでも水の中にもぐると、周囲の水圧が体にかかり、体の中の閉鎖空間である中耳は外界に比べて相対的に鼓膜が陥凹する状態になります。たとえば20cmもぐると200mm水柱の外耳道陽圧です。これは、耳鼻科の中耳機能をみる検査、チィンパノメトリーの検査で経験する耳の中のキューンとする感じに似たものになります。ですから、数メートル潜る潜水ではその10倍以上の圧が中耳にかかることになります。その程度が強かったり、長時間にわたるようになると、中耳に血液がたまったり浸出液がたまってきて中耳炎になったり、もっとひどいときは中耳の奥の内耳のリンパ液が中耳にもれ出てきたりして、強烈なめまいや難聴をおこしたりすることがあります。この内耳の障害による難聴や耳鳴りは程度も強く直りづらいものとなります。また、潜水中にめまいをおこして平衡覚がおかしくなれば、命にかかわる自体も生じることになります。
これを防ぐためには、鼻をつまんでいきむ、いわゆる“耳抜き”を頻繁にしながらもぐっていかなければなりません。この動作によって鼻から耳に空気が送り込まれて、中耳の陰圧が解消されるからです。ところが、風邪を引いていたり、鼻のアレルギー(花粉症もふくめて)や、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)などの鼻の病気があったりすると、鼻の粘膜が腫れていて、その続きである鼻と耳をつなぐ耳管の粘膜も腫れるので、耳抜きがうまくできないことがあります。そうすると、潜水に伴う中耳陰圧は解消されずに、さきほどのべたような重篤な耳の病気を生じる可能性があります。また、飲酒によっても鼻の粘膜ははれますし、過労や睡眠不足などで体調が悪いと粘膜の血行をつかさどる自律神経の働きもおちて、うまく耳抜きができなくなります。そういう時は、体の免疫機能も落ちて中耳炎や内耳障害がおこりやすくなり、治りにくい状態となります。

スキューバダイビングで注意しなければならないことを、耳との関連でまとめてみますと
1、 スキューバダイビングができるには、耳抜きができなくてはならない。
2、 耳の病気(中耳炎など)がすでにある場合には、基本的にはスキューバダイビングはできないと考える。主治医と相談してください。
3、 かぜやアレルギー性鼻炎などのため鼻の調子が不調の場合。
4、 過労気味だったり、前日の過飲酒、睡眠不足があったりで、体全体の調子が悪い場合。
5、 普段耳抜きができる人でも、なんらかの理由で耳抜きがうまくできない日は、あまり深くもぐらないようにして、何かの場合にすぐ対処できるように浅くするか、もぐらないようにした方がよいです。
6、 水圧による圧外傷を甘く考えてはいけません。
7、 耳管機能を見る検査機器は当院に設置してありますので、ご心配の方はご相談ください。

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