トップページへ 院長の気ままな話題
 

●耳鼻咽喉の季節の話題


秋2006
【妊娠とクスリとの関係について】

  これからの季節、かぜやインフルエンザなどの季節を迎えますが、妊婦さんには困った季節かとおもいます。お腹のあかちゃんのためには薬は飲みたくないし、でも風邪もひどくしたくないし、思案のしどころです。私もできることならば内服を避け、すみやかに病気を治したいと考えますが‥‥。
あかちゃんは胎盤からへその緒を通じてお母さんとつながっています。ですから胎盤を通過するかどうかが大きなポイントと考えます。
クスリの説明書にはどのクスリでも妊婦への投与にあたっては必ず「妊娠または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。すなわち、妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。」との使用上の注意がかいてあります。これって、このクスリを飲んだ場合に、万が一異常が起こっても、それは投与した医師とそれを了解して内服した患者さんとの間の問題ってことですね。そうすると、わたしもおいそれと妊婦さんや近い将来妊娠する可能性がある方には、一般の耳鼻科の外来でみる疾患ぐらいでは、先ずはクスリなしで局所の治療だけで様子見てくださいといってしまいます。
ここではもうちょっと学問的に考えて見ましょう。
多くのクスリは胎盤を通過することにより、くすりが胎児に移行することが知られています。妊娠のじきによって胎児への影響が違ってきます。
先ず、受精後2週間以内(妊娠3週末まで)に薬物の影響を受けた場合には、受精卵が着床しないか、流産するか、あるいは完全に修復されて健常児として分娩されます。この時期って本人も妊娠を自覚してないかちょっと生理が遅れているかなと思っているぐらいです。妊娠がわかる前にクスリを飲んでしまったから心配ですという人もいますが、神経質になる必要はありません。
次に妊娠4〜7週末までの妊娠2ヶ月は、絶対感受期といって胎児の中枢神経、心臓、消化器官、四肢などの重要な器官が発生・分化します。胎児が一番クスリによる催奇形性を受けやすい時期で、この時期のクスリの投与はできる限り避けます。
妊娠8〜15週末で妊娠3〜4ヶ月のじきは、胎児の重要な器官形成はすでに終了してはいますが、性器の分化や、歯の形成や口蓋などの閉鎖の過程はまだ続いています。胎児のクスリに対する感受性は次第に低下してますが、まだまだ催奇形性という危険性は、はらんでいます。やはりクスリの投与は慎重にしなければいけません。
妊娠16週〜分娩までの妊娠5ヶ月以降の時期は、今度は胎児毒性が問題となります。クスリの投与によって、胎児の発育に影響を及ぼしたりします。
結局、いつの時期もだめではという結論になってしまいますが、ここでの話はあくまでも仮定であり、一般に普通の妊婦さんの出産にあたり、3〜5%に何らかの奇形が合併します。催奇形性があると判明しているクスリでも通常の妊婦の奇形合併率に比べて1〜2%程度増加するぐらいで、一般のクスリがその常用量であれば胎児に影響及ぼす影響はほとんどないと考えてよいと思います。
結論としては、クスリはできる限り短時間、必要最小量(最小有効量)にとどめることです。ちょっとのことでは風邪などを引かない丈夫な肉体と健全な精神をもつことです。
あと、一般の薬局で売っている市販薬は医療用の医薬品にくらべ薬物の種類や用量について安全性が考慮されてはいますが、だからといって催奇形性や、胎児毒性がないわけではありません。解熱鎮痛剤や抗ヒスタミン薬、胃腸薬なども注意が必要です。
【院長の気ままな話題バックナンバーページへ】
トップページ 医院案内 耳鼻咽喉の病気 Q&A診察室 院長の気ままな話題