嗅覚に関しては「院長の気ままな話題」の中で嗅覚検査について述べています。嗅覚の構造についても述べておりますので参照してください。
嗅覚は鼻腔粘膜上皮の線毛で行われます。この線毛が鼻腔粘液の表面に出ていて、においの分子が粘液に溶解して初めてにおいを感じます。
患者さんの訴える嗅覚障害は、量的な異常と質的な異常に大きく分かれます。量的な異常とは嗅覚低下、嗅覚脱失、嗅覚過敏などで、質的な異常は異臭症といわれ、本来のにおいとは別のにおいを感じる場合や、臭い刺激がなくてもにおいを感じる嗅幻覚とがあります。
障害部位により下記のように分類されます。
(1)気流通過障害により、臭素が嗅上皮に達しないもの(呼吸性)
(2)嗅粘膜自体に腫脹、過剰分泌などの病変のあるもの(嗅粘膜性)
(3)嗅神経の切断、変性などによるもの(嗅神経性)
(4)位中枢の障害によるもの(中枢性)
当院の外来で主に治療の対象となるのは(1)と(2)の場合です。(1)では鼻副鼻腔疾患によるものです。(2)は感冒罹患後嗅覚障害です。
嗅覚障害の治療の大きな発展はここ何十年ありません。他の動物においては嗅覚は生死にかかわる問題ですが、人においてはその機能が退化しております。生活をうるおすという役目が主になっているような気がします。
ですから、嗅覚障害の患者さんも長い期間ほっといたりして、やっとお見えになるというぐあいです。
ステロイド点鼻療法
嗅覚障害の治療法としては国内で広く行われており、一般の診療所から大学病院の嗅覚外来においても基本的なレシピは同じと考えます。
懸垂頭位でリンデロン液を両側の鼻腔に2〜3滴滴下し5分間それぞれの姿勢を保ちます。これを朝晩2回行います。だいたい2〜3か月行い、ステロイドの副腎皮質への影響も考えその後は1〜2か月の休薬期間をとります。
この治療法で(1)と(2)の場合70〜80%は改善しますが、完全治癒という点では芳しい結果ではありません。
(1)の場合では、副鼻腔炎に伴って鼻茸が嗅裂にある場合は手術的治療が必要です。
(2)の場合では、風邪によるウイルス感染による嗅細胞への直接障害が原因と考えられます。嗅細胞再生の促進を考えた治療もおこないます。
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