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Q.81 耳垢ってどうしてたまるのですか。
A.81

毎日の診療で耳垢栓塞という疾患は非常に多いです。必ず何人かいます。 耳垢は外耳道の分泌腺から分泌される分泌物と粉塵などが混じることで形成されています。これが外耳道全体を占めるようになると耳垢栓塞という疾患になります。耳垢を分泌する耳垢腺はアポクリン腺で軟骨部外耳道に存在しています。この分泌腺は清浄作用や殺菌作用を持つといわれています。耳垢の形状により湿性耳垢と乾性耳垢にわけられます。日本人では一般に乾性が多く西洋人では湿性が多いといわれています。耳垢栓塞になりやすいのは湿性耳垢です。

ご家庭で取り辛くなった場合は、最寄りの耳鼻咽喉科でとってもらいましょう。


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Q.82 耳垢栓塞ってどうやってとるのですか。
A.82

耳垢鉗子や吸引管を使ってとりますが、先ず前処置が必要です。比較的少ない耳垢栓塞でも無理にひっぱったりすると皮膚の痛みや出血したりすることがあります。特に皮膚の弱い老人や子供では、一回でとったほうが患者さんの通院回数も少なくて済むからと思ってやってしまうと、よからぬ結果になることがあります。付き添いのひとは耳垢ごときでと思われでしょうが、私が傷つけると私の責任になってしまいます。

少し硬そうな耳垢や量の多いときは耳垢水といって耳垢を柔らかくするお薬を処方して事前におうちで何回かつけて耳垢を柔らかくしていただき、それから来院していただきこちらで除去します。それでも量が多かったり、除去に際して痛みを伴う場合には数回にわけてとります。

遠くから来院された方や、お仕事の都合でなかなか来院する時間がとりにくい方では、時に外来の待合室で耳垢水をいれ、15分ぐらい横になってもらい、とる場合もあります。

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Q.83 耳垢栓塞をとった後になにか困ったことが起こりますか?
A.83

外耳道一杯に詰まり、鼓膜にも固着した状態の両側の耳垢栓塞の同時除去では、耳の処置をした後に一時的にふらふらしたようなめまいを訴える患者さんがいます。特に老人では危険です。付き添いの方がいる時には、一度にする場合もありますが(なかなか付き添いの方がこられない場合も多いので…)、基本的には片方ずつにさせていただきます。最後吸引で除去しなければ取れない場合は、特に鼓膜を通して中耳から、内耳への刺激症状がありますので、若い方でも処置が終わって診察用の椅子から降りる時にふらっとされる方もいます。

また栓塞状態になっていると、大体の方が長い間の影響で軽い皮膚炎を起こしています。初発症状が先ず痛みでやってくる方もいますので、その場合は徐々に除去し、先ず外耳炎の治療を行い、痛みが治まってから、全除去します。なかなか全除去できずに3〜4回に分けてやっと除去できるというかたもいます。また、柔らかくなっていると思って、耳垢鉗子でひっぱた時に、少し外耳道に傷をつけてしまい、少々出血してしまうこともあります。患者さんは耳がこんなに詰まっているとはおもはないので、最後に、ごっそりとした耳垢の塊を見せると皆さん驚きの声をあげ、少々の出血は許してくれます。私も患者さんが痛くないように、怖くないように、傷をつけないように気をつけながらやっていますが・・・。

耳垢取りは日常の診察の中で、かならずあります。鼓膜や外耳道の所見をとるためには少々の耳垢でも診察の差し支えになります。ですから、耳疾病の診断と治療には大変大事なことで、耳鼻科医としてはこれがうまく取れるようになれば一人前になっているのかと、わたしは個人的には思っています。耳鼻科医の資質として、患者さんの耳のどこを触ると痛いか、出血しないような力加減も熟知して、そして恐怖感を持たせないようにすることが分かってきたということです。


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Q.84 子供の耳垢とりについて
A.84

小さいお子さんではしっかりとした頭と体の固定が大事になります。ちょっとでも動くと外耳道を鉗子や吸引で傷つけることになります。学童では基本的にひとりで診察椅子に座ってもらい、看護師が頭を両手でしっかり押さえ、手足の押さえは付き添いの親御さんに協力していただきます。中には暴れまくる子もいますので、なかなか一筋縄ではいかない場合もあります。乳幼児の場合は基本的に付き添いの方に抱いていただき、手は付き添いの方にしっかり押さえてもらい、頭と足は職員が押さえ込みます。抑え方が手ぬるいと、時間もかかってしまいます。つわものでは大人が4人で押さえ込み、そして私が取るという、子供1人に大人が5人ということもしばしばあります。どんなに大変でもいただける点数は同じ。できたら、かかった大人の手の数で処置料金を設定してもらいたいものです。


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Q.85 耳鼻咽喉科のネブライザー療法について教えてください。
A.85

噴霧発生装置すなわちネブライザーnebulizerによって抗菌薬などの薬液を噴霧化し、それを加圧噴霧して副鼻腔内や喉頭に到達させようとする治療法です。必ず耳鼻咽喉科を受診すればネブライザーのユニットが診察室に設置され、喉頭とか鼻とかの吸入を行っている患者さんがいます。

ネブライザーに使用される薬剤は抗菌薬、ステロイド薬、抗アレルギー剤、血管収縮剤などがあります。その組み合わせや、用いる薬剤はそれぞれの診療所で、異なります。院長の考えに従った内容になり、抗菌薬の濃度も異なります。

適応症としては先行したウイルス感染に続いて発症した急性副鼻腔炎や、慢性副鼻腔炎はネブライザー療法の適応です。咽頭喉頭炎もウイルス感染で初発しますが、遷延化すると細菌感染が主体となるので、喉頭ネブライザーをします。


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Q.86 秋にも花粉症があるんですか?
A.86

花粉症というと、いわゆる春のスギ花粉症が日本ではすぐに思いつきます。でもでも、1年中いろいろな花粉があります。秋に限って言えばキク科のブタクサやオオブタクサ、ヨモギ、クワ科のカナムグラが代表的です。

ブタクサの植生分布は川に沿った土地に繁茂することが知られており、私が住む古河市は渡良瀬川が流れており、ブタクサの植生にはうってつけの土地柄です。ヨモギはわが国自生種で、平地から高山にまで広く分布する非常に繁殖力の強い植物です。春の草もちの材料ですが、秋になるとかなり背丈が大きくなり、かわいげがなくなり、花粉症の原因となります。

雑草類は樹木花粉である杉やヒノキなどの花粉と異なり、花粉が数メートルしか飛散しないので、近寄らなければ、十分にアレルギー症状の発現を予防することができます。


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Q.87 顔が赤く腫れてきたのですが?
A.87

顔面が赤く腫れて来院される患者さんの中には、耳(外耳道や耳介も含めて)を不潔なものでいじくって傷を作り、そこから感染が始まる場合があります。おおかたは、ブドウ球菌が多いいのですが、中には、口腔内の扁桃腺に感染を起こして、扁桃炎や猩紅熱を起こすことで有名な溶連菌も真皮に感染を起こし、耳から顔面にかけて限局性の境界鮮明な発赤・腫脹を起こす場合があります。一般の溶連菌感染症と同様な治療をおこないます。ペニシリンの投与を行います。中には悪寒や発熱、局所の疼痛も伴う場合があります。基礎疾患として糖尿病や免疫力の低下のために皮膚の抵抗力も弱くなっていると生じやすいです。年に何人かいます。


この患者さんでは左耳介と左頬部の発赤と腫脹がありました。

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Q.88 中耳炎ってどうしてなるのですか?
A.88

良く聞かれる質問ですが、ここでは急性中耳炎について、その発症について述べたいとおもいます。

急性中耳炎の感染は次のような経路と機会によって起こります。耳鼻咽喉科のバイブルといえる教科書から引用にしています。


  1. 耳管経由
    1. 風邪による上気道(鼻炎・鼻咽頭炎・扁桃炎)の急性炎症に引き続いて起こる場合。
    2. 鼻の手術の後や、鼻洗浄、鼻を強くかんだあと、スキューバなどで潜水したあと。
    3. 飛行機に乗って気圧の差が大きいとき、高山にドライブにいったあとなど。
  2. 外耳道より鼓膜の穿孔経由
      入浴、海水浴等、汚水が耳に入った場合。
  3. まれに血行感染経由
      流行性感冒、猩紅熱、麻疹、肺炎などの感染性疾患の場合。

起炎菌としては以前にも述べたように肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ カターリス、黄色ブドウ球菌などです。 これらの菌が中耳腔に侵入して、炎症をおこし、粘膜の肥厚と、膿汁の分泌をきたすものです。その炎症の程度は細菌の毒性と個体の抵抗力に関係して異なります。また、乳突蜂巣発育の具合や、鼻腔、鼻咽頭疾患の有無により経過や、病型がちがってきます。


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Q.89 耳鼻咽喉科の疾患に関る小児の予防接種について
A.89
(1) 流行性耳下腺炎

ムンプスウイルスにより、人から人へと接触あるいは飛沫感染により感染します。潜伏期は約2〜3週間です。3分の1は不顕性感染といって、感染しても、おもだった症状が出現しないで、抗体を獲得します。

症状としては耳下腺や顎下腺が腫れて、小児科や耳鼻咽喉科に来院されますが、その前2日間ぐらいから、感染力が強くあります。発症後1週間以上は唾液中にウイルスがあります。

ムンプスウイルスで耳鼻咽喉科的に問題となるのは、ムンプス難聴といって高度難聴が発現することがあります。頻度としてははっきりしないですが、何千人に一人という具合で、片側だけの場合が多く、幼児期には見逃されていて、小学校に入学して、学校の健康診断で発見されることもあります。治すことの出来ない難聴です。

(2) 風疹

ここで問題になるのは、妊婦が風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、先天性風疹症候群と呼ばれる重篤な先天異常をもたらします。妊娠中のどの期間に感染するかによって症状の出方は異なりますが、感音難聴、眼の疾患、心臓の奇形などの三大症状が出現します。難聴の合併率は高いようです。やはり先天性風疹症候群にたいしての治療法はなく、妊娠する前に必ず予防接種を行い抗体価をあげておくことが大事です。

アガサ・クリスティーの推理小説のTV映画で、ミス・マーブルシリーズがあります。その中の1つで、有名女優の犯した殺人を推理する物語があるのですが、同情するような内容で、この風疹が関っているのです。彼女が若いころ、巡業で確か南アフリカ?に行った時に会ったファンが風疹を隠して、顔の発疹なども化粧でカバーし高熱をおして、その女優に会いに行ったのです。その時彼女は妊娠初期で、その後そのファンからもらった風疹のため、やった得た子供が先天性風疹症候群であったという話です。その子は眼も見えない、耳も聞こえない状態で、心臓に関しては不明なのですが、施設で孤独に過ごし、女優もその悲劇を隠して華やかな仕事を続けていたのです。その後10数年後にひょんなことから、風疹をうつしたファンと再会し、そのファンが以前会ったとき自分の風疹を隠して会いに行ったことを悪気なくいってしまったのです。そしてその女優は、このファンから風疹をうつされたということに気付き、殺意を抱くのです。その後そのファンはパーティーで毒殺されるのです。母親としては障害者として生まれた子供に対して自責の念もあったのでしょう。

(3) 肺炎球菌感染症

肺炎球菌は鼻咽頭に定着していて、ウイルス感染などのさまざまな感染をきっかけに、その病原性を発揮します。中耳炎や肺炎の原因菌にもなります。

90種類の血清型に分類されており、急性中耳炎を発症する一般的な血清型は3、6A、6B、9V、14、19A、19F、23Fです。7価結合型ワクチンはこれらの問題となる、血清を含んでいます。

(4) インフルエンザ菌

インフルエンザ菌は人の鼻咽頭に常在菌としてみられます。小児の細菌性髄膜炎の原因となり、また、耳鼻咽喉科では急性喉頭蓋炎や急性中耳炎の起因菌となることも多いです。

以上、日本耳鼻咽喉科学会報の専門医通信の項を参照して、記載しております。


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Q.90 鼻の中に穴が?
A.90

鼻の症状の訴えで患者さんの鼻の中をのぞくと、鼻の中の真ん中のしきり、すなわち鼻中隔の前方に穿孔を認めるかたがいらっしゃいます。鼻血の訴えがあったりする場合もありますが、風邪などに伴った、鼻の症状を訴えた際に、たまたま見つけることが多いです。
頻度としては少ないのですが、以前のことを詳しくお聞きすると、鼻の手術を受けていたり、鼻粘膜を電気やレーザーで鼻出血の止血のために焼灼術を受けた既往があります。そのときに小さな鼻中隔の穿孔ができていたのかもしれませんが、その時は気付かれずに、だんだんと穿孔が広がったのかもしれません。昔は鼻中隔穿孔をみたら、梅毒やジフテリア、らい病などを疑うように教えられましたが、今はそういうことはほとんどないと考えます。ほかは化学物質の吸入や、乾燥性鼻前庭炎などです。

今回、たまたま鼻出血で来院された方は、以前に鼻出血で何回かレーザーでやいてもらったことがあるということがわかりました。その方の右と左の鼻腔を呈示します。

いわゆるキーゼルバッハ部位(だれでも出血しやすいところです)に穿孔があるのがわかります。両側の鼻粘膜にはさまれて鼻中隔軟骨があるわけですがそれが欠損してしまったということです。


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