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Q.71 顔面の骨折について
A.71

去年、市川海老蔵さんの事件もありましたが、顔面を殴られたりしたときの骨折についてお話します。

下の図は顔面の解剖図です。顔面はひとつの骨で出来ているわけではなく、いくつかの骨と副鼻腔で形成されています。海老蔵さんは上顎骨の陥没骨折だったようですので、いわゆる副鼻腔の手術と同じようなapproachで陥没を修復したようです。

さて顔面の外傷で多いのは裂傷、打撲の順で、次に骨折です。その原因としては、交通事故、転落や転倒、次に暴行、最後に割合は少ないですがスポーツです。そして、骨折した骨の種類で見ると、下顎骨、上顎骨、頬骨、眼窩壁、鼻骨の順になっています。上顎骨には上顎洞という副鼻腔があり、そこは空洞になっているわけで、前壁は薄く骨が折れやすいところです。そして、眼窩下孔といって三叉神経の第2枝が頭蓋から出てくるところがあります。それは顔面の真ん中3分の2の部分の知覚を支配しています。おそらく海老蔵さんもこの神経のしびれ感は残ってしまうのではないかと思います。


顔面の外傷の特殊性として、人間の顔であり、表情筋の損傷や皮膚の瘢痕は美容と機能、あるいは精神的な障害も伴うこともあります。また脳神経の末梢枝が集中して、その障害もおこします。鼻や口もあり、気道や食道の入り口でもあり、咀嚼や構音の障害も起こします。また、顔面の骨折は隣接する眼窩や側頭骨、頭蓋底の骨折も伴うこともあるので、注意しなければなりません。


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Q.72 耳だれって何ですか?
A.72

外耳道から排泄される分泌物の総称です。耳漏ともいいます。

いろいろな疾患で生じます。
(1) 耳垢
普通より柔らかい耳垢を出す体質の人は、黄褐色の耳漏として流出することがあります。たまに親御さんが心配して連れてくることがあります。
(2) 外耳炎
しょう液性(外耳道湿疹・び慢性外耳炎)、膿性(外耳道セツ)
(3) 中耳炎
炎症の程度、時期によりいろいろです。
しょう液性(急性中耳炎の初期)
粘液性(慢性中耳炎など)
膿性(化膿性中耳炎など)
血性(インフルエンザ中耳炎・頭部外傷・癌)

※細菌の種類によっては耳漏が臭い場合があります。

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Q.73 進行する難聴について教えてください。
A.73

代表的な疾患については下記のものがあります。

(1) 特発性両側性感音難聴
原因不明の感音難聴のなかで、両側性に難聴が進行する病気です。
その診断基準としては
  1. 進行性であること
  2. 原因不明であること…騒音、外傷、中毒、遺伝性が関与していないこと。
  3. 両側性であること…これは両側が同じような病態を示すという意味ではなく、両側罹患という意味です。一側のみが進行という場合もふくみます。

    ※ 私どもの患者さんで身体障害者の診断を行ったかたですが、ご本人のお話では、学生時代は普通に聞こえていたが、成人してから、何かの手術がきっかけで聞こえが両側とも悪くなり、その後徐々に進行してきたという方がいます。当院で6〜7年前に4級を認定しましたが、その2年後に片方がもっと聞こえなくなり、突発性難聴に凖ずる治療を行いましたが、結局聴力は回復せず固定した状態になってしまったため、さらに2級の認定を行い今に至っています。局所的な外見の異常はありませんでした。 なお、聴力障害による身体障害は2級が最高です。
  4. 遺伝性難聴
(2) 遺伝性難聴
先天性難聴のうち約60〜70%は遺伝性といわれています。
(3) 騒音性難聴
慢性的に長時間にわたって騒音に曝露されていると発症します。職業と密接な関係があるため職業性難聴とも呼ばれています。初期の段階では4kHzを中心に現れ、オージオグラムではC5−dipとよばれています。進行すると広い周波数にわたって障害されてきます。
(4) 老人性難聴
加齢により進行します。より高い周波数から障害され、典型的な方ではオージオグラムでは右肩さがりになります。
(5) 聴神経腫瘍
(6) 薬剤性難聴
アミノ配糖体抗菌薬・白金製剤・グリコペプチド系抗菌薬・マクロライド系抗菌薬・サリチル酸製剤・インターフェロン・一部の利尿剤
結核に対する抗菌薬
(7) 内耳梅毒…経験したことがありません。

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Q.74 1回で花粉症に効く注射があると聞いたのですが?
A.74

おそらくステロイドの注射でケナコルト−Aの筋注だと考えられます。1回の注射によって花粉症が乗り切れるという風説がありますが、確かではありません。中にはその副作用によって医療訴訟に発展している場合があるようです。症状としては注射部位の皮膚陥凹や局所の腫脹、麻痺などが出るようです。頻度は不明ですが、1%前後と言われています。日本耳鼻咽喉科学会ではこの注射はしない方針です。シーズンになると私のところにもこの注射を希望される方が来院されますが、当院ではその理由をお話してお断りしています。


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Q.75 耳鼻咽喉科疾患における予防接種の必要性について
A.75

中耳炎の起炎菌として多いのがインフルエンザ菌、肺炎球菌、ブドウ球菌やコリネバクテリアなどです。特に先の2種類の細菌に関しては、予防注射があります。小さな子供の肺炎などの重篤な病気を引き起こすばかりでなく、鼻やのどに感染してその結果、耳管経由で中耳炎を引き起こします。現在は任意接種のため負担も大きく、日本医師会などでは無料化に向けて国に働きかけています。

●沈降7価肺炎球菌結合型…生後2月齢以上9歳以下
初回免疫は通常3回で27日以上の間隔をあけて3回受けます。その後追加免疫として、初回免疫終了後60日以上の間隔をあけて1回受けます。
●b型インフルエンザ菌(Hib)…生後2月齢以上5歳未満
初回免疫は通常3回で4〜8週間間隔で受けますが、医師が認めた場合には3週間間隔で接種は可能です。その後追加免疫として、初回免疫終了後おおむね1年後に1回受けます。

その他、予防接種のあるウイルス性の疾患(インフルエンザ、おたふくかぜ、水痘、麻疹、風疹等)でも中耳炎を引き起こします。

いろいろな予防接種があり、全部を手際よく受けられれば子供のためには非常にmeritがあります。でも乳幼児は免疫が十分に出来ていない為、すぐに風邪をひいたり、ちょっとしたことで発熱したりします。お母さんたちもお仕事を持っていると、いろいろな都合で受けそびれたりします。

未来ある貴重な子供たちのためにがんばって予防注射をうけさせましょう。


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Q.76 声を出し辛いのですが?
A.76

発声の仕組みについて述べます。

先ず、脳から声を出すようにという命令が呼吸筋にいき、呼吸筋が収縮して肺から呼気流が気管を上方に向かって、それがenergyとなり、そして声帯を動かす迷走神経の枝である反回神経が両側声帯を内側に寄せて声門が閉鎖され、声帯が振動され音源となります。その後、のどとか鼻とかが共鳴腔となり声となります。咽頭や口腔で子音や母音を構築していきます。下の図は某製薬メーカーの冊子からお借りしたものです。


声帯は組織学的には粘膜と筋肉からなり、粘膜は上皮と粘膜固有層からなります。上皮に関しては、発生に際して一番大きく振動する声帯の縁は重層扁平上皮になっていて、手足の皮膚と同じになっています。重層扁平上皮は外の刺激にたいして強いものですが、声帯の上下は多列線毛上皮で、声帯の柔軟な動きに対応し、また粘液も産生し、声帯をおおっています。


発声障害を生じる病態としては、発声器官の形態異常が一番多く、その代表的なのが声帯のポリープや結節、あるいはポリープ様声帯、まれに喉頭癌。日常的に多いのが急性の声帯の炎症などです。あとは発声器官の運動障害で、声帯麻痺です。喉頭の動きをつかさどるのは迷走神経の枝である反回神経で、この神経は走行距離が長く何かの原因で損傷を受けることがあります。この反回神経の障害による麻痺です。また、年をとってくると筋力の低下により、呼吸も弱くなり、したがって発声音も弱くなります。あと時に見受けられるのが声門には異常がないが、息をつめたような発声になってしまい、嗄声となる場合です。多くは精神的な要因で、発声時に過緊張になってしまうものです。


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Q.77 アレルギーの薬の種類について教えてください。
A.77

今年は花粉の飛散量が非常に多く、不快な花粉症状を訴えて来院される患者さんが大変多くいらっしゃいました。一昨年、去年と花粉の量も少なく花粉症が治ったと考えていた方もいたようですし、今年花粉症デビューした患者さんもいます。

皆さん鼻の粘膜はグチュグチュになっていて、眼の周りの皮膚も少し赤くかさかさになっていたり、白目も赤く充血して、鼻の入り口はたびたびこすっているか、鼻をかんでいる為か、赤くすれています。そして中には鼻中隔粘膜がびらんして出血した痕もみうけられます。もちろん症状の軽重はそれぞれで違いますが。

近年花粉症の患者さんは増加傾向にあり、従って、薬の種類も多種類あります。患者さんにどの薬を使用するかは、Dr.の経験によりいろいろを組み合わせていきます。今年は1種類の抗アレルギー薬では症状の押さえ込みが難しく、抗ヒスタミン剤を加え2種類、あるいは3種類の内服薬に点鼻薬を組み合わせて投与した患者さんが多くなっています。

個人的な経験では、抗アレルギー薬の季節前投与は効果があります。

患者数は2月頃から予防薬投与も含めて去年より出だしは多かったのですが、特に東日本大震災直後は、たわわについた花粉が地震の揺れでどっと空中に散布され、雨と一緒に地面一面が黄色くなるほどでしたので、その後から症状がひどく出てきた患者さんも多かったようです。

下の図は某製薬メーカーの抗アレルギー薬の一覧表です。最新版ではないのでその後発売されたものもありますし、また、いわゆるジェネリックといわれるものは掲載されていません。

他院の薬が効かないといって来院される方(お薬手帳を忘れたり、薬の名前が分からない方)には、この一覧表を見ていただき、該当する薬を示してもらいます。そして医者の匙加減をして処方します。これが効かないようでしたら、次回来院時にその旨言っていただき、次なる一手を考えます。試行錯誤します。これがhitすれば、来年もこれで行きます。

即効性の抗ヒスタミン薬は眠気や、口渇、腺分泌の抑制をしますので、精神神経科系のお薬を内服している方や、緑内障、前立腺の病気がある方、喘息の発作時には使用できませんので、注意が必要です。いわゆる総合感冒薬にはこういった成分が含まれることもありますので要注意です。

薬の効き方は個人差がありますので、眠気などの副作用の頻度が少ないといわれる薬でも、その症状を訴える患者さんはいます。それぞれの薬のセールスポイントを踏まえて、処方していきます。


 


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Q.78 前庭神経炎によるめまいについて教えてください。
A.78

耳の聞こえの低下などの蝸牛症状を伴わないで、再発しない突発性のめまいを主症状とするめまいです。一般にウイルス感染が原因と推定されていますが、血流障害を原因とする場合もあるようです。発症誘因として上気導感染の頻度が高く、発症に先行して感冒様症状を認めることが多いです。

自発性の強い回転性めまいが突然発症し、数時間持続し、悪心、嘔吐などの自律神経症状も伴いますが、難聴や耳鳴などの蝸牛症状や中枢症状は伴いません。大きなめまいは通常1回で、その後は数日間から数ヶ月続く回転性めまい、体動時、歩行時の浮動感が数ヶ月持続します。

当院でも長い方は半年以上の経過を見ている方もいます。

治療としては、障害された神経障害の回復のために、一般的なめまいの薬とともに、ステロイド療法をおこないます。

末梢性のめまいに関しては、前庭障害が回復しなくても中枢性前庭系の機能代償により、次第に軽減してきます。この現象を前庭代償と呼びます。

この前庭代償を促進するためには、めまいの急性期が過ぎたら、離床させ、積極的に運動するように指導します。

“めまいは寝てては治らない!”


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Q.79 鼻のかみかたについて、もう一度教えてください。
A.79

鼻をかむことは非常に大事なことです。鼻汁が鼻内にたまっていると、鼻疾患の遷延化につながりますし、鼻腔の奥の方には耳管の開口部がありますから、そのあたりにたまったままにしておくと、耳管の換気障害をおこして、耳管狭窄症状や、耳管経由で細菌感染が生じ中耳炎を引き起こすこともあります。

鼻かみはうまくすれば2〜3歳からできるようになると思います。

その練習法としては、小さいお子さんでは、鼻先10〜20cmぐらいのところにティッシュペーパーをかざします。先ずお母さんがお手本を見せます。口をつぐんで鼻から息をフンと吹きかけて、ティッシュペーパーをひらひらさせます。子供がこれに興味を示せばしめしめです。今度は片方の鼻の鼻翼を押さえて、ひらひらさせます。子供にもこの順序でためさせてください。じょうずにできたらにほめてください。最後本番の鼻かみです。ティッシュを使って鼻をかませます。

両方いっぺんにかんではいけません。必ず片方ずつですよ。


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Q.80 声が最近しわがれてきたのですが。(70歳以上の高齢の方からのQ)
A.80

高齢の方に関してですが、声も年齢にともなってしわがれてきます。声帯も年取ってくるのです。

声の老化の原因としては、

  1. 粘液分泌の低下による声帯粘膜の乾燥
  2. 声帯の中にある筋肉の萎縮
  3. 声帯の弾力を保っているヒアルロン酸の減少による声帯弾性の低下
  4. 一人暮らしのため声を使わなくなり、廃用萎縮になる可能性
の以上が考えられます。

乾燥しないように十分水分をとり、筋肉が萎縮しないように会話や、歌うことが大事です。


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