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Q.51 耳の前の方に小さい穴があり、そのまわりが腫れてきています。
A.51  先天性耳ろう孔と考えられます。耳介を形成する第1鰓弓と第2鰓弓の融合不全によるもので、先天性奇形の1つと考えられます。約20%位の人では両側にみられます。また、家族性にみられ、遺伝的な場合もあります。
  生涯腫れないで過ごす人もいますが、汚い指でさわったりしてそこに感染がおこると腫れてきます。周囲まで腫れ膿瘍を形成する時は切開して膿をだします。根治的治療はろう孔の摘出です。

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Q.52 のどの奥の方にぶつぶつとしたものがあります。何か出来ているのですか?
A.52  鏡をかざしてのどの奥のほうをみると確かにぶつぶつとしたものがあります。これは舌のおくのほうの味覚を司る味蕾乳頭か、もう少し奥の舌根部のリンパ組織を見ているのかと思います。心配はありません。

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Q.53 野球のボールがあたってから、耳が痛くて聞こえにくいのですが。
A.53  外耳道や鼓膜の外傷について述べます。
 よくあるのは、耳かきをしている最中に耳かき綿棒が外耳道や鼓膜を傷つけ、外耳道の皮膚をえぐったり、運悪く鼓膜を突いて穴をあけたりする場合です。この場合は出血を伴ったり、痛みも伴っていたりします。また、当日は気付かなくても、翌日外耳道の入り口に血が固まっていたり、枕元が血で濡れていたりしてきづかれることがあります。鼓膜に穴が開いている場合は、くさび形だったり、ラウンド形だったりします。出血で状態がよくわからないときもあります。ひどい場合は内耳の方まで外傷が及びめまいや感音性の聴力障害も生じることがあります。
 取りあえずは出血を止めます。傷が汚ければ抗生剤等を投与したり点耳薬も投与したりします。
 次によく見られるのは耳元に大きな外圧が加わったときに見られる鼓膜損傷です。この質問のようにボールがあたったり、耳をはたかれたりして、鼓膜にくさび形の断裂が入ることがあります。この傷は比較的きれいですので、感染さえしなければ比較的早期に鼓膜の閉鎖機転が働きなんの支障もなく直ります。鼓膜の穴の大きさによって伝音性聴力障害の程度はさまざまです。ほんとに小さい穴であるとほとんど聴力障害もない場合もあります。
 下の写真はここ半年間で当院で経験した方の鼓膜穿孔の写真を掲載しています。暗くなってしまい、わかり辛いですが、ご覧下さい。

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Q.54 ムンプス難聴ってなんですか?
A.54  ムンプスとは「流行性耳下腺炎」、すなわち「おたふく風邪」のことです。おたふく風邪で耳が聞こえなくなるなんて、お母さん方も考えてもみなかったことだと思います。
 おたふく風邪の合併症としては髄膜炎、膵炎、睾丸炎などが有名ですが、難聴もあります。発生頻度は少ないと思いますが、片方だけに起こる場合がほとんどなので、幼少児では訴えもなく、そのまま見過ごされてしまい、学校に上がるときに発見されるということもあります。
 おたふく風邪の予防注射は任意接種になっていますので、昔ほどきちんと予防接種を受けないお子さんもいます。予防接種被害のほうばっかり大きく取り上げられて、病気に罹患したときの大きな合併症が注目されていないと思います。
 最近の予防接種は任意接種が多くなり、麻疹などでもその傾向がみられます。
 もし、あなたのお子さんが中耳炎とかの既往もなく片方の耳が聞こえてないとわかったとしたら、小さいときにかかった、おたふく風邪が原因だったかもしれません。
 もちろん、先天性片側聾といって、先天的に片方だけ聞こえが悪い場合もあります。

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Q.55 耳が腫れて少しいたいのですが。
A.55  この場合の患者さんは耳介、特に舟状窩がプヨプヨにふくれている患者さんです。 この2枚の写真はいわゆる耳介血腫といわれるもので、写真@はクラブ活動で柔道をしている学生さんです。写真Aは寝ている間の自覚的な出来事がなく生じた血腫です。やはり一番見られるのは格闘技系のスポーツで寝技とか組み技のあるスポーツで耳介を折り曲げられたり、圧迫されたりしてできる血腫が多いです。寝ているときに自然になってしまったのも、寝返りを打ちながら、知らず知らずのうちに耳介を圧迫していたのでしょうか。

次の写真は耳介血腫を穿刺したあとの分泌物を示しています。新鮮な場合では穿刺された内容物は血液様で、少し時間のたった場合では血球成分と血漿成分が分離するため穿刺液としては透明感のある薄茶色〜黄色の液となります。

 こういう患者さんは繰り返すことが多く、何回か穿刺を繰り返した後、お見えにならなくなります。穿刺することで血腫の周辺から癒着の機転が働き、治癒になります。耳介の変形を生じる場合もあります。

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Q.56 子供がよく風邪をひきます。インフルエンザの予防接種をしても風邪をひきます。どうしてでしょうか?
A.56  一般的に風邪と言っているのは、ウイルスが鼻やのどに感染して咳やくしゃみ、鼻水などの症状をおこす、急性の鼻・咽頭炎です。この原因になるウイルスには200種類以上あるようです。あるウイルスに感染するとそれに対しては免疫反応により抗体ができ、すぐにそのウイルスに罹患することはないのですが他のウイルスにたいしては無力です。ですから次から次へと新たなウイルスに感染してしまうのです。ところで、インフルエンザは風邪の一種とみられがちですが、別の感染症と考え、対応しなければなりません。インフルエンザも鼻やのどに感染して風邪症状を起こしますが、39度前後の急激な発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が強く、肺炎なども合併して重症化することもあります。特に、乳幼児では脳炎などを合併して、死亡したり、後遺症を残したりすることもあります。インフルエンザの予防注射を打った後でもいわゆる風邪にはかかりますが、インフルエンザという、乳幼児の死亡原因になる病気を予防するということから、インフルエンザの予防接種は必要です。インフルエンザに罹りにくくするということと、たとえ罹ったとしても症状を軽くするということで是非予防注射は受けさせてください。

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Q.57 風邪のときにはお風呂に入ってはいけないのですか?
A.57  よく聞かれる質問ですが、子供が風邪をひいたときにお風呂に入らせてよいのやら、保護者の方は悩まれるとおもいます。その程度により判断させていただき、特に発熱時には入浴による体力の消耗などを考えると、発熱がおさまってからと指導しています。あと、入浴後の子供の管理にも問題があると思います。湯ざめをさせないようにするとか、洗髪をしたら、手早くドライヤーで乾かすとか、入浴後はすぐに寝かせるとか、保護者の方がちゃんとした管理をしてくれれば、軽症の風邪の場合は、入ってもかまわないと考えています。

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Q.58 ヘッドフォンでよく音楽を聴いています。耳が悪くなることはないですか?
A.58  長い時間大きな音で音楽を聴くと難聴の原因になると思います。
  原因としては音圧、暴露時間、周波数のいずれか、あるいはその組み合わせです。大きな音圧であれば比較的短時間でも難聴はおこります。たとえばコンサートで前のほうの席でスピーカー近くに位置し、ガンガンに演奏を聴いていた場合、いわゆるロック難聴とかです。また、低い音圧でも長時間聴き続けることで難聴を生じます。職業による騒音性難聴などです。周波数では比較的高い周波数の音が内耳に対して障害性が高いことが知られています。音は空気中を伝播する間に、高周波帯の成分は減弱しますが、ヘッドフォンで聞く場合は、それほど減衰しないで耳に届くため、同じボリュームで音楽を聴いていても、高い音域の周波数帯に強い音を含む音楽を聴くことになってしまいます。また長時間聴いていると、大きな音に対して感受性が低下してしまい、だんだんとボリュームをあげてしまうということもあります。

  次の方では注意しなければなりません。
  1. 騒音性難聴の既往歴がある人
  2. 片側性の難聴の人
  3. 先天性の中等度〜軽度難聴のある人
    難聴が進行するおそれがあります。
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Q.59 インフルエンザワクチンの有効性について
A.59  ワクチンをしっかり2回受けたお子さんでもインフルエンザにかかることがあるし、1〜2か月前にA型インフルエンザになっているのに、また今度はB型インフルエンザに罹ってしまったと嘆かれる親御さんがいます。だからといって、予防接種はする必要はないということはありません。この事に関して、アステラス製薬から、頂戴した、よい資料がありますので、転載させていただきます。


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Q.60 学校健診について
A.60  今、わたしは古河市の小学校の耳鼻咽喉科の校医としていくつかの小学校の健診を担当しています。そしていつも思う事は、ここ古河市(特に旧古河市)は恵まれているということです。
 まず、人口の割合に占める耳鼻科医の数は他の市町村に比べて十分な人数が確保されており、昔から、小中学校の耳鼻科の健診は毎年行われていました。
 茨城県全体でいえば医師数全体が全国レベルからもずっと少ないのですから、その中で占める耳鼻科医の数も当然少ないわけです。同じ茨城県内でも耳鼻科医の健診がなく内科医が耳鼻科を兼任して咽頭をチェックして、耳とか鼻とかの視診はなく児童の健診がなされている地域が多くあります。もちろん簡単な聴力検査は一応あります。
 そしてわたしは、この町の医療に恵まれている子供たちの健診を行うたびに、いつも大した病気はないと感じています。一番多い病名としては耳垢栓塞、つまり耳垢詰まりと、いまどきの子に多くみられるアレルギー性鼻炎です。たまに中耳炎やそれほどひどくない副鼻腔炎の子が見受けられますが、ほんの一握りです。
 古河市は町の子ですから、親御さんが子供に無関心でない限りは、ちょっと耳が痛いの、のどが痛いとかですぐに来院してくれます。
 ほんとに恵まれています。
 ちなみに古河市は茨城県の西南部に位置し4県に接していますが、隣接する、野木町や北川辺町などは、すぐ近くであっても県が異なりますので、耳鼻科健診はありません。
 本当に耳鼻科健診が必要なのはお医者さんの少ない医療過疎の地域だと思いますが、実際私たちがそこへ行けるかというと無理です。また、1人あたりの報酬も何百円の単位ですから、私のようにそろそろ老境に入ってきたものには、ご免こうむります。
 最後にこの項で言いたいのは、耳鼻科健診は2つの耳の穴、2つの鼻の穴、のどの穴と5つの穴に光をあて、覗き込む作業が何百人と続くと本当に疲れます。短い時間の中での診断ですから、鼓膜の色の具合とかで、疾患名をつけてしまうこともありますし、健診時の状態ですか、健診の報告を持って耳鼻科を受診されるころは鼻の調子やのどの調子も良くなっていることもあります。その点をご理解ください。
 また、簡単なスクリーニングの耳鼻科健診でもあるにもかかわらず、問診表にすごい症状が書いてあって、診察すると大したことはない例も見受けられます。心配な場合は健診の前に耳鼻科医を受診してください。

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